医療が発達した現代でも、膵臓がん(すい臓がん)は治療が難しいことで知られています。そのため、「膵臓がんに罹患したら初期のうちに治療を開始したい」と考える方は多いのではないでしょうか。
膵臓がんは初期症状だけでは判別がしにくいものの、検査を受診することで早期発見・治療が期待できる病気です。
この記事では、膵臓がんとはどのような病気かを説明するとともに、膵臓がんの初期症状や発覚のきっかけ、早期発見に必要な検査などについて解説していきます。
膵臓がん(すい臓がん)とは
膵臓がん(すい臓がん・膵がん)は、長さ15~20cm程度の横長な形状をしている「膵臓」に発生するがんです。
膵臓は膵液と呼ばれる消化液を産生する臓器で、内部には膵液を送り出すための膵管が通っています。その周囲には、肝臓・胃・十二指腸・脾臓といった臓器や腹腔動脈・門脈などさまざまな血管があり、人体の深い位置に存在していることが特徴です。
膵臓の役割は、外分泌機能と内分泌機能の2つに分けられます。
外分泌機能とは、膵液を十二指腸に分泌して食べ物の消化を助ける機能のことを指します。一方で、インスリンやグルカゴンといった血糖値を調整するホルモンを血液中に分泌する機能を内分泌機能といいます。
膵臓がんの種類は、外分泌を担う細胞から発生する「外分泌系」と内分泌を担う細胞から発生する「内分泌系」の2つに大別でき、なかでも外分泌系の「浸潤性膵管がん」は、膵臓がん全体の約9割を占めるとされています。
膵臓がんのステージ別5年生存率
膵臓がんの進行度を示す指標としては「ステージ(病期)」が用いられており、ステージ0からステージ4までの5段階があります。ステージの数字が大きくなるほどがんは進行し、患者の健康や治療の選択肢にも影響があらわれます。
膵臓がんのステージ別の5年生存率は以下のとおりです。
| 実測生存率 | ネットサバイバル |
|---|
| ステージ1 | 49.4% | 53.4% |
| ステージ2 | 20.8% | 22.5% |
| ステージ3 | 5.8% | 6.2% |
| ステージ4 | 1.5% | 1.6% |
参考:がん情報サービス 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム
※実測生存率:死因にかかわらず、すべての死亡を含めて計算した生存率
※ネットサバイバル:がんのみが死因の状況を仮定して計算した生存率
膵臓がんの5年生存率は、がん発生初期であるステージ1がもっとも高く、ステージが進むほど低くなっています。この結果からも、効果的な治療をおこなうためには早期発見が重要であることがわかります。
膵臓がん発症のリスク要因
膵臓がんの発症リスクを高める要因には、以下のようなものが挙げられます。
- 家族に膵臓がんや遺伝性膵がん症候群になった人がいる
- 糖尿病・慢性膵炎・膵管内乳頭粘液性腫瘍に罹患している
- 喫煙や大量飲酒の習慣がある
- 肥満体型である
特に、第一度近親者(親子・兄弟姉妹・子ども)で膵臓がんになった人が2人以上いる場合は家族性膵がんと呼ばれ、膵臓がんの発症リスクが高くなります。
膵臓がんの初期症状
膵臓がんの発生初期はがんの大きさが小さく、膵臓そのものも身体の奥に位置しているため初期症状を自覚しにくい傾向があります。
ただし、腹部の違和感や他疾患の悪化など、膵臓がんとの関連が気づきにくい症状があらわれることがあります。
ここでは、膵臓がんの代表的な初期症状を5つ紹介します。
腹部のはりや食欲不振
膵臓がんになると、腹部のはり(腹部膨満感)や食欲不振が症状としてみられます。「普段の食事量なのに食後はお腹が苦しい」「食事がいまいち進まない」という方は注意してください。
膵臓がんの多くを占める浸潤性膵管がんでは、腫瘍は膵管から発生します。腫瘍が大きくなることで膵管が閉塞し、消化液である膵液の分泌低下を招くことが腹部のはりや食欲不振の原因です。
腹部や背中の痛み
膵臓がんの初期症状としてあらわれることは少ないですが、進行すると腹部や背中に痛みを感じることがあります。増大したがんが周囲の組織や臓器を圧迫することが痛みの原因です。特に、腫瘍が神経を圧迫すると強い痛みが生じます。
また、膵管が腫瘍に閉塞されると膵管内部の圧力が高まり、膵臓の炎症(随伴性膵炎)によって腹痛を引き起こすこともあります。
短期間での体重減少
膵臓がんの代表的な症状のひとつが、短期間での体重減少です。ダイエットや食事制限をしていないにもかかわらず、極端な体重減少が見られる場合は注意しましょう。
膵臓がんが体重減少を招く理由は、消化液である膵液の分泌が滞り、身体の栄養吸収が妨げられるためです。
また、がん細胞は正常な細胞よりも多くのエネルギーを消費する性質があります。がん細胞がエネルギーを得るためにタンパク質や脂質を分解してしまうため、患者自身の体重減少や栄養失調へとつながってしまうのです。
白目部分や皮膚の黄疸
眼球の白目部分や皮膚が黄色くなる「黄疸」は、膵臓がんの早期発見につながる重要な初期症状です。
そもそも黄疸は、黄色の色素「ビリルビン」が血液中に増加することであらわれる症状です。ビリルビン増加の原因には、肝臓・胆管の異常や溶血(赤血球の過剰な破壊)があります。
膵臓がんであらわれる黄疸は、大きくなった腫瘍が胆管を圧迫して胆汁の分泌を阻害することが原因です。家族や知人に「白目や肌が黄色くなっている」と指摘されたときは、黄疸を疑ったほうがよいでしょう。
糖尿病の発症や悪化
「急に糖尿病を発症した」「もともとの糖尿病が悪化した」という症状は、膵臓がんの初期症状の可能性があります。
膵臓の内分泌機能で産生されるインスリンには、血糖値を低下させる働きがあります。膵臓がんになるとインスリンの分泌機能が障害され、その結果、血糖値低下の働きが弱まり糖尿病の発症・悪化を招きます。
糖尿病は膵臓がんの発症リスクを高める要因でもあるため、糖尿病に罹患している方はもちろん、新たに発症した方も注意が必要です。
膵臓がんを発覚する4つのきっかけ
膵臓がんには、国が指針として定めたがん検診がありません。加えて初期症状もわかりにくいため、早期発見が難しいがんとして知られています。
しかし、定期的な検査や医療機関の受診により、膵臓がんが早期の段階で発見されるケースは少なくありません。ここでは、膵臓がんを発見する4つのきっかけを紹介します。
健診・検診や人間ドック
健康診断やがん検診、人間ドックといった検査を定期的に受けることは、膵臓がんの早期発見に寄与します。異常が指摘されて精密検査を受ければ、膵臓機能の障害を発見できる可能性があるからです。
なかでも、人間ドックでは全身を調べることができるため、膵臓がんの早期発見にも有効だとされています。膵臓がんの初期症状である黄疸や腹部膨満、血糖値の異常も発見できるでしょう。
また、糖尿病・肥満などの生活習慣病や膵炎といったリスク要因も把握でき、膵臓がんの予防をしたい方にもおすすめです。
他疾患の検査による偶発的な発見
膵臓がんを発見するきっかけとして多いのが、他疾患の検査による偶発的な発見です。
たとえば、肝炎や胃炎でCT検査を受けたとき、膵嚢胞(膵臓内部で液体が溜まった袋状の病変)や膵管拡張(膵管の圧力が高い状態)が見つかることがあります。
膵嚢胞や膵管拡張は膵臓に何らかの異常が起きているサインであり、膵臓がんの発見につながる症状です。
血液検査の異常値の指摘
血液検査は血液中の成分を調べる検査であり、異常値を指摘されることで膵臓がんの発見につながる可能性があります。
たとえば、膵液を構成する膵酵素(アミラーゼ・リパーゼ・トリプシンなど)が血液中に多い場合は膵臓の病気が疑われます。がんの浸潤によって膵臓の細胞が破壊され、膵酵素が血液中に流出している可能性があるからです。
また、膵臓がんの腫瘍マーカーである「CA19-9」や「CEA」の値が高い場合も、膵臓がんの発症が疑われます。
何らかの症状による医療機関の受診
腹部のはりや腹部・背中の痛み、黄疸などの症状で医療機関を受診することも、膵臓がん発見のきっかけになることがあります。
ひとつひとつの症状は健康に大きな影響がないように感じていても、大事をとって医療機関を受診すれば膵臓がんを早期発見できる可能性があります。
疑わしい症状がある方や発症リスクが高いことを自覚している方は、医療機関を受診して膵臓がんの検査を受けるとよいでしょう。
膵臓がんの早期発見に必要な検査
膵臓がんの検査では、最初に血液検査や画像検査でスクリーニング(ふるい分け)をおこなった後に、細胞診や組織診でがんの確定診断をします。
膵臓がんの診断のために用いられている検査は、おもに以下の6つです。
- 腹部エコー(超音波)検査
- 造影CT検査
- MRI検査(MRCP)
- 超音波内視鏡検査(EUS)
- 内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)
- 細胞診・組織診
膵臓がんの検査を受ける際は、どのような検査が早期発見に有効であるかのほかに、検査の精度や安全性についても理解しておくとよいでしょう。
参考:がん情報サービス「膵臓がん 検査」
腹部エコー(超音波)検査
腹部エコー(超音波)検査は、超音波を用いて腹部の臓器を画像化し、臓器の状態や病変の有無を調べる検査です。無害な超音波を使用するため患者さんへの負担が少なく、膵臓がんの最初のスクリーニングとして用いられています。
ただし、患者さんの体格や腸管に溜まるガスによっては画像化が難しいケースがあり、腹部エコー検査のみでは膵臓がんを発見できない可能性があります。
そのため、膵臓がんの発見には腹部エコー検査だけではなく、造影CT・検査MRI(MRCP)・超音波内視鏡検査(EUS)のなかから、ひとつ以上の検査をおこなうことが一般的です。
造影CT検査
CT検査は、X線を照射して身体の断面を画像化する検査です。膵臓がんの検査では、造影剤を静脈に注射してから撮影する造影CT検査が推奨されています。
造影CT検査は、膵臓に発生したがんの位置・形状・広がりを正確に映し出せることが強みです。腹部エコー検査のように体格や腸管ガスの影響を受けにくく、膵臓がんの発見に有効な検査のひとつです。
ただし、造影CT検査をおこなっても、発生初期の小さな膵臓がんは発見が難しいケースがあります。
MRI検査(MRCP)
MRI検査は、強力な磁気を用いて体内を画像化する検査です。特に膵臓がんの検査では、胆嚢・胆管・膵管を撮影する磁気共鳴胆管膵管撮影(MRCP)がおこなわれています。
MRI検査で使用するのは磁気であるため、患者さんへの身体的影響が少ないことがメリットです。MRCPは画像の描出能も高く胆管・膵管の異常を捉えられるため、膵臓がんの早期発見が期待できます。
超音波内視鏡検査(EUS)
超音波内視鏡検査(EUS)は、超音波装置が先端についた内視鏡を口から挿入し、胃・十二指腸といった消化管の壁越しに膵臓や肝臓を観察する検査です。体内から超音波をあてるため体格や腸管ガスの影響をほとんど受けることがなく、膵臓・肝臓を詳細に調べることができます。
また、膵臓の病変部に針を刺して組織や細胞を採取する「超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)」という検査を同時におこなうことがあります。
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)は、内視鏡を十二指腸まで挿入し、膵管に造影剤を注入してX線撮影をする検査です。膵管に発生している結石・狭窄・炎症などの描出に優れ、膵液採取による細胞診もおこなえます。
ただし、急性膵炎などの合併症を引き起こす可能性があり、患者さんへのリスクも存在する検査方法です。ほかの検査で膵管の異常が認められるものの腫瘍が確認できないケースなどでは、細胞診をおこなうための手法として用いられています。
細胞診・組織診による病理診断
細胞診・組織診は、病変部の細胞・組織を採取後に顕微鏡で観察し、がんの有無を調べる検査です。
膵臓がんの細胞診・組織診には、以下のような手法があります。
- 超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)
- 内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)による膵液細胞診
- 腹部超音波ガイド下の穿刺生検
細胞診・組織診はがんを確定させるための病理診断です。膵臓がんの診断は画像検査のみでは限界があるため、可能な限り病理診断をおこなうことが推奨されています。
膵臓がんを早期に発見するためには
膵臓がんは発生初期に自覚できる症状が少なく、気付いたときにはステージが進行していることが多いがんです。そのため、早期発見をするには医療機関で定期的な検査を受ける必要があります。
セントラルクリニック世田谷では、CT検査・MRI検査などの検査を組み合わせた多彩な人間ドックコースを用意しております。オプション検査として血液検査や腫瘍マーカー、血中循環がん細胞を検出するCTC検査も利用でき、初期症状の少ない膵臓がんであっても早期発見が期待できます。
膵臓がんは早期発見から治療開始につなげることで、完治の可能性を高められるがんです。定期的に人間ドックを受診することにより、自分の健康状態が把握できるだけではなく、膵臓がんのリスク予防や早期発見にもつながるでしょう。
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まとめ
膵臓がんは早期発見が難しいといわれていますが、その理由のひとつとして初期症状のわかりづらさが挙げられます。
膵臓がんのおもな初期症状には、腹部膨満感や腹部・背中の痛み、体重減少、黄疸などがあります。しかし、膵臓がん特有の症状ではないため発症を自覚しにくく、結果として発見が遅れるケースが多くみられます。
膵臓がんの早期発見には、定期的な人間ドックの受診が有効です。画像検査や血液検査・腫瘍マーカーで異常があれば、精密検査で膵臓がんを発見できる可能性があります。
セントラルクリニック世田谷では、膵臓がんの早期発見につながる高精度の検査を提供しております。「膵臓がんの症状ではないか気になる」「発症リスクが高いから注意したい」という方は、ぜひ一度セントラルクリニック世田谷にご相談ください。