PET検査は危険って本当？副作用や検査後の注意点など解説
一度の検査で全身のがんを調べられるメリットがあり、人間ドックやがん検査などの予防医療でも取り扱われているPET検査。がんの早期発見に向いているとして普及されつつありますが、放射線物質が含まれる薬剤を用いることから、体への危険性について不安を感じる方もいるのではないでしょうか。
PET検査には大きな危険性がないといわれていますが、いくつかの注意点を事前に知っておくとより安心です。
この記事では、PET検査の放射線による危険性や副作用、検査後の注意点などについて解説します。PET検査を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
PET検査とは？
PET検査は、検査用の薬剤を注射で投与した後に、薬剤の分布を画像化することで全身の状態を調べる検査です。PET検査の主な目的は、がん細胞の有無や転移の確認などです。そのほか、アルツハイマー型認知症や心筋梗塞の検査に使用されることもありますが、一般的には、がんの検査を目的として「PET検査」と表現することが多いでしょう。
PET検査でがんの有無を調べる場合は、FDGとよばれるブドウ糖に放射性物質を添加した薬剤を使用します。
PET検査の仕組み
PET検査の仕組みは、がん細胞が正常な細胞よりも多くのブドウ糖を取り込む性質を利用しています。具体的な検査の流れと仕組みは以下のとおりです。
- 静脈からFDGを注射して一定の時間が経った後、全身の血管にFDGがいき渡る
- 全身にいき渡ったFDGはがん細胞の周りに集まる
- 画像診断によってFDGが多く集まっている部位（＝がんの可能性が高い部位）を確かめる
PET検査はCT検査やMRI検査などの画像診断と組み合わせることで、がんの有無や広がりなどをより高精度で診断できます。体内に取り込まれたFDGは尿から排泄されるため、翌日にはほとんど体内から消失します。
わずかな放射線被曝はあるものの、アレルギー反応や副作用はほとんど報告されておらず、危険性や副作用を抑えつつ高精度な診断が可能です。
PET検査で見つかるがんの種類
PET検査では、大きさが1cm以上のがんを検出できるといわれています。検出しやすいがんの種類には、頭頸部がん・咽頭がん・喉頭がん・甲状腺がん・食道がん・肺がん・乳がん・膵臓がん・食道がん・大腸がん・卵巣がん・子宮体がん・悪性リンパ腫などがあります。
しかし、早期胃がんや前立腺がん、腎がん、膀胱がん、肝臓がんの検出には適していません。特に早期胃がんは、直接胃の状態を確認できる内視鏡検査のほうが向いています。また、FDGは尿によって排泄されやすいため、腎臓や膀胱が関連するがんは検出が困難です。肝臓もFDGが集まりにくい性質があるため、肝臓がんの検出には適していません。
PET検査は、がんの転移や再発の診断、治療効果の判定にも有用です。しかし、PET検査で検出できる病態の範囲は限界もあるため、状況に応じてほかの検査法と組み合わせて総合的に診断することが重要です。
PET検査の被ばく量と危険性
PET検査の被ばく量は健康被害が生じるほどではなく、危険性もほとんど伴いません。FDGを注射して1回のPET検査を受けた場合、被ばく量は約3.5mSvとなります。これは、私たちが日常生活で大地や宇宙などから自然に受ける、年間の放射線量約2.4mSvの約1.5倍に相当します。
PET検査とCT検査を組み合わせた「PET-CT検査」の場合でも、CT検査による追加の被ばくが5～14mSv加わるものの、この程度の被ばく量では健康被害が生じる危険性はないと報告されています。
環境省の報告によると、がんリスクが上昇する被ばく量は、100〜200ｍSv以上であり、PET検査の被ばく量はそれよりも少ないため、安全性が確保されています。
参考：環境省ホームページ「がんのリスク（放射線）」
PET検査のメリット
PET検査のメリットとしては、おもに以下の３点が挙げられます。
- 一度でほぼ全身のがんを調べられる
- 検査による痛みや違和感が少ない
- がん細胞の活性状況がわかる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
一度でほぼ全身のがんを調べられる
PET検査の大きなメリットは、１回の検査で全身のがんを効率的に調べられることです。
FDGという放射性薬剤を投与して画像診断をおこなうことで、全身のがんの有無や状態を包括的に評価できます。
この仕組みにより、腫瘍の大きさや正確な位置、転移の状況、治療効果を確認することが可能です。良性腫瘍と悪性腫瘍の鑑別にも役立ちます。
検査による痛みや違和感が少ない
PET検査のメリットは、身体的負担が比較的少ないことも挙げられます。
PET検査は静脈注射でFDGを投与した後、検査台に仰向けになって画像撮影をおこなうだけです。そのため、画像撮影中は横になっているだけでよく、痛みや違和感はほとんどありません。造影剤アレルギーのある方でも検査が可能です。
これらの特徴により、痛みを伴う検査が苦手な方や体への負担が心配な方でも、安心して検査を受けられます。PET検査は、検査に対する不安や恐怖感が少なく、幅広い患者に適しています。
がん細胞の活性状況がわかる
PET検査の独自の特徴として、がん細胞の活性状況を視覚化できることが挙げられます。PET検査ではFDGががん細胞に集まる程度によって、がんの活性度を評価できます。一般的に、FDGが豊富に集まる部位は悪性度が高く、進行が早い場合が多いです。
この特性により、PET検査は腫瘍の悪性度の予測や治療効果の早期判定にも有用だといわれています。しかし、FDGの集まりやすさは臓器によって差があり、良性腫瘍でもFDGが集まることがあります。そのため、検査結果の解釈には専門的な知識が不可欠です。
PET検査のデメリット
PET検査には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。PET検査のデメリットは以下の３つです。
- 検査に時間がかかる
- 費用が高額になりやすい
- 血糖値が高いと診断の精度が落ちる
これらについても詳しく解説していきます。
検査に時間がかかる
PET検査は、全体の流れを含めると2～3時間程度の時間を要します。まず、FDGを注射してから全身にいき渡るまでの1～2時間は安静にする必要があります。その後30～40分間、検査台の上で仰向けになって、画像撮影をおこないます。
仕事や日常生活などで時間的な制約のある方にとっては、検査時間が大きな障壁になることもあるでしょう。また、じっとしていることが苦手な方は困難に感じるかもしれません。
費用が高額になりやすい
PET検査の費用は自費となることが多く、高額になりやすいのもデメリットのひとつです。保険適用されるのは、てんかんや心不全などの特定の条件を満たす場合に限られています。
基礎疾患のない人ががん検診や人間ドックの一環としてPET検査を受ける場合は、ほとんどの場合、自費診療になります。そのため、経済的な負担が大きくなる可能性が高いでしょう。
PET検査が保険適用される条件は以下の記事でも解説していますので、詳細を知りたい方はあわせてご覧ください。
血糖値が高いと診断の精度が落ちる
PET検査の診断結果は、患者の血糖値に大きく影響されます。血糖値が高い状態では、FDGが集まりにくく、診断の精度が著しく低下する可能性があるからです。空腹時の血糖値が200mg/gLを超えると、がんの病変が見えにくくなるため、PET検査が中止になる可能性もあります。
そのため、検査前の5～6時間は絶食する必要があります。特に糖尿病の人や血糖値が高い傾向にある人は、適切な対策を講じる必要があるため、あらかじめ医療機関と相談しましょう。
場合によっては、検査のタイミングを調整したり、検査が終わるまで血糖値の薬やインスリンの注射を控えたりする必要があるかもしれません。
PET検査の副作用
PET検査は一般的に危険性が少なく、放射線被曝やアレルギーによる副作用はほとんどないとされています。まれに発熱や嘔吐、血圧低下、気分不良などの軽度の副作用が報告されていますが、これらの症状が現れても多くの場合は自然に回復します。
検査後に体のだるさや違和感が続く場合は、検査を受けた医療機関に相談しましょう。
体内にいき渡ったFDGは尿として排泄されるため、十分な水分摂取を意識することが副作用の軽減にも役立ちます。
PET検査後の注意点
PET検査が大きな危険性を伴うことはないですが、検査後は水分補給を意識することとや、他人との密接な接触をできるだけ避けるよう注意すると良いでしょう。その理由について、それぞれ詳しくご説明します。
積極的に水分を摂取する
PET検査後は、体内に残存するFDGを効率的に排出させるために、積極的な水分摂取が重要です。水分を多く摂ることで、FDGが尿として体外に排出される速度が上がります。これにより、体内の放射線量を減少させ、被ばく量を抑えることが可能になります。
積極的な水分摂取は検査前から意識することが推奨されていますが、検査後はより多く摂取することが望ましいです。しかし、腎臓疾患などで水分制限がある場合は、医師の指示に従ってください。
家族との接触をできるだけ避ける
PET検査が終わった後12時間程度は、放射線被ばくの危険性を考慮し、家族や身の回りの人との密接な接触はできるだけ控えましょう。
PET検査の直後は、体内に残存するFDGから微量の放射線が放出されます。体から放射線が放出されることにより、周りの人に不必要な放射線被ばくを与える可能性があるのです。短時間の接触であればそこまで問題ありませんが、とくに乳児や妊婦などへの接触は避けましょう。
なお、体内の放射線は翌日にはほとんど検出できないレベルにまで低下するため、長期的な心配は不要です。
PET検査についてよくある質問
PET検査についてよくある質問を以下にまとめました。
Q.PET検査後に性行為をしても問題ないですか？
PET検査後の性行為に関しては、特に禁止事項とされていません。しかし、体内から放出される微量の放射線が気になる方は、検査後にある程度の時間が経ってから性行為をすることをおすすめします。
Q.がん検診でPET検査を受ける必要はありますか？
PET検査はあくまで任意の検査であり、国が推奨する標準的ながん検診には含まれていません。
しかし、がんによる死亡率が高まる60代以降の年齢層や、がんの家族歴がある人は、PET検査ががんの早期発見につながる可能性があります。PET検査は複数のがんを同時に検査できるため、このようなリスクの高い方には有用といえるでしょう。
検査の必要性については、個人の状況や基礎疾患、家族歴、年齢などを考慮したうえで判断しましょう。
まとめ
今回は、PET検査の危険性やメリットとデメリット、検査後の注意点などについて解説しました。
PET検査はFDGという薬剤を用いて全身のがんを調べる画像診断です。FDGには放射性物質が含まれますが、健康被害による危険性はほとんどないことがわかっています。PET検査で受ける被ばく量は、がんリスクが生じる被ばく量よりも少ないため、さほど心配する必要はないでしょう。薬剤のアレルギーによる副作用もほとんど報告されていません。
しかし、PET検査が終わった後は、体内の放射線を排出させるために積極的に水分を摂ることが大切です。また、検査が終わった直後は体内から放射性物質が排出されきっておらず、密接な接触により周りの人が被ばくする危険性もあります。特に乳児や妊婦などとの接触は控えましょう。
PET検査で体内に取り込まれた放射線は、半日ほどかけて排出され翌日にはほぼなくなるため、体への危険性は残りません。
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