3Dマンモグラフィ(トモセンセシス)とは?痛くないって本当?

40歳以上の女性は、最低2年に一回のペースで乳がん検診を受けることが推奨されています。しかし、乳がん検診で痛い思いをしたり、周りから「痛い」と聞いて受診を躊躇したりしてしまう方も多いことでしょう。
乳がん検診が痛いのは、マンモグラフィ検査によるものです。マンモグラフィ検査において、これまでは2Dマンモグラフィが一般的でしたが、近年では3Dマンモグラフィが普及しつつあることをご存知でしょうか。両者では痛みの度合いに違いがあるとの声もあがっているのです。
本記事では、3Dマンモグラフィの概要からメリット・デメリット、従来の2Dマンモグラフィとの違い、検査時の痛みなどについて詳しく解説します。乳がん検診を検討している方や、人間ドックのオプション選びに迷っている方は参考にしてください。
3Dマンモグラフィ(トモセンセシス)とは?

3Dマンモグラフィは「デジタルブレストトモシンセシス」とも呼ばれる乳がんの検査機器です。従来の2Dマンモグラフィでは確認しづらかった小さな病変や、乳腺が重なり合って見えにくい部分も、立体的な画像で捉えられることが特徴です。より精度の高い診断が可能であるとして、乳がん検診や人間ドックで注目を集めています。
3Dマンモグラフィの撮影方法
3Dマンモグラフィで検査画像を撮影するには、まず乳房を従来どおり圧迫板で挟んで固定します。固定された乳房の上を、X線を発するカメラが回転し、乳房を複数の角度から撮影していきます。
この撮影で得られた多数の断面画像をコンピューターで再構成することで、乳房内部の三次元的な構造を明確に映し出せます。これにより、二次元の構造では発見しづらい病変も鮮明に描出され、診断の信頼性が大きく向上するのです。
3Dマンモグラフィと2Dマンモグラフィの違い
3Dマンモグラフィと2Dマンモグラフィの違いは、撮影画像の捉え方や診断の精度です。
2Dマンモグラフィは一方向からのX線撮影にとどまるため、乳腺が重なる部分では病変を認識しづらく、見落としや偽陽性などの問題が発生することがあります。
一方、3Dマンモグラフィでは乳房を多角的に撮影し、断面ごとに画像を解析できるため、乳腺組織の重なりを避けて病変を詳細に観察できます。 3Dマンモグラフィは、2Dマンモグラフィと比較して病変の見落としや不要な再検査の可能性が減り、診断の精度を上げることが可能です。
3Dマンモグラフィが有効な人
3Dマンモグラフィは、2Dマンモグラフィなどで乳腺密度が高いと判断された人に有効な検査方法です。
乳腺密度が高いとX線を通しにくく、2Dマンモグラフィでは病変を見落とす可能性があります。しかし3Dマンモグラフィであれば乳腺の重なりを除外した画像を得られるため、乳腺密度の高い場合でも病変を発見しやすいのです。
また、乳がんの術後に再発の有無を確認する場合や、乳がんのリスクが高い人(家族で乳がんに罹患した人がいる場合など)にも、3Dマンモグラフィによる検査が推奨されています。
3Dマンモグラフィは痛くない?

3Dマンモグラフィは、2Dマンモグラフィと同様に、2枚の圧迫板で乳房を挟んで検査画像を撮影します。そのため、圧迫による痛みがまったく無いとはいえません。
ただし、検査にあたり2Dマンモグラフィほど強い圧迫は必要なく、圧迫が軽減されることで痛みも少なく感じられる傾向にあります。
痛みの感じ方には個人差がありますが、2Dマンモグラフィで痛みが辛かった方は、3Dマンモグラフィでの検査を試してみる価値はあるでしょう。
3Dマンモグラフィのメリット

3Dマンモグラフィには、以下のようなメリットがあります。
- がんの検出率が向上する
- 再検査率が減る
- 悪性の診断精度が向上する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
がんの検出率が向上する
3Dマンモグラフィには、2Dマンモグラフィよりも乳がんの検出率高いというメリットがあります。
一方向から撮影する2Dマンモグラフィとは異なり、1回の検査で複数の断面画像を取得できるため、乳腺の重なりによって隠れていた病変が明瞭に描出され、がんの早期発見につながる可能性が高まります。特に乳腺密度が高い方にとっては、がんの見逃しリスクを減らせる大きな利点といえるでしょう。
再検査率が減る
乳がんの再検査率を減らせることも3Dマンモグラフィの特徴です。
2Dマンモグラフィでは、乳腺の重なりが異常所見として映ることで偽陽性となり、本来であれば不要な精密検査がおこなわれる場合があります。これは検査を受ける人の心理的な負担に加え、時間やコストの面でもデメリットになります。
一方、3Dマンモグラフィは断面ごとの鮮明な画像で乳腺構造を立体的に捉え、高い診断精度で結果を出すことが可能です。それにより、偽陽性を避けられるため、結果的に再検査の割合が減少します。
良性・悪性の診断精度が高い
3Dマンモグラフィでは、乳房の微細な石灰化も明瞭に観察できるため、悪性所見の識別能力が向上します。石灰化はさまざまな原因で乳房に生じるカルシウムの沈着で、多くの場合は良性のものですが、がんによって生じた悪性のものである場合もあります。
石灰化の良性・悪性を判断する際には、形状や分布などの観察が必要になりますが、3Dマンモグラフィではこのような精査も可能です。そのため、医師がより正確に診断しやすくなり、不要な生検や治療を回避できる可能性も高まります。
3Dマンモグラフィのデメリット

多くのメリットがある3Dマンモグラフィですが、以下のようなデメリットも存在します。
メリット・デメリットを比較しながら検討しましょう
- 撮影時間が長くなる
- 検査を受けられない人がいる
- 自費診療になる場合がある
撮影時間が長くなる
3Dマンモグラフィでは、1回の検査で複数枚の検査画像を撮影します。そのため1枚だけ撮影する2Dマンモグラフィよりも、撮影時間が数秒ほど長くなります。
わずかな差ではありますが、乳房を圧迫する時間が延びることになるため、人によっては不快感や痛みを強く感じる可能性があるでしょう。また、検査中の体勢を維持することが苦手な方にとっては、やや負担になることも考えられます。
検査を受けられない人がいる
3Dマンモグラフィは、すべての人が受けられる検査ではありません。妊娠中または授乳中の人、豊胸手術を受けている人、ペースメーカーや体内金属が埋め込まれている人などは、検査の安全性や画像の精度に影響が出る可能性を考慮して、受診が制限されることがあります。
これらに当てはまる方は、必ず事前に医師に相談しましょう。医療機関によって設備や対応方針も異なるため、事前に確かめておくことが必要です。
自費診療になる場合がある
3Dマンモグラフィによる検査は、今まで保険適用外の検査であったため、人間ドックや乳がん検診のオプションとして自費診療で受けることが一般的でした。自費診療の場合は、検査費用が高額になる場合があり、経済的な負担が発生するでしょう。
2024年4月からは、乳がんの診断精度をより上げるために保険診療としての対応も可能になったため、条件を満たせば費用を抑えて受診できる可能性があります。詳細は受診予定の医療機関に確認しましょう。
参考:厚生労働省ホームページ「令和6年度診療報酬改定の概要【医療技術】」
3Dマンモグラフィの料金

3Dマンモグラフィの料金相場は、人間ドックなど自費診療の場合で、1万円〜2万円程度です。
3Dマンモグラフィは単独で受けるよりも、基本的な検査コースに追加したり、超音波検査や視診・触診などと組み合わせたりする「オプション検査」として提供している医療機関が多いです。医療機関によっては検査内容や設備が異なる場合があるため、事前に確認しておきましょう。
3Dマンモグラフィでよくある質問

最後に、3Dマンモグラフィに関するよくある質問に回答します。
Q.3Dマンモグラフィの被曝量はどのくらいですか?
A.3Dマンモグラフィの被曝量は約1.0mGyとされており、医療被ばくガイドラインの低減目標値である2.4mGyの半分以下です。従来の2Dマンモグラフィと比較しても大きな差がなく、両方の検査を受けてもこの低減目標値を下回ることが多いです。
放射線の量が気になる方も、過度に心配する必要はないでしょう。
参考:日本放射線技師会ホームページ「日本の診断参考レベル(2020年版)の概要と運用上の注意点」
Q.3Dマンモグラフィの撮影枚数はどのくらいですか?
A.3Dマンモグラフィでは、1回あたり15〜20枚程度の画像を撮影します。撮影自体は10秒程度で完了します。
Q.3Dマンモグラフィを導入している医療機関はどのように探すと良いですか?
A.医療機関のホームページで、検査機器や検査オプションに3Dマンモグラフィの記載があるかを確認すると良いでしょう。わからない場合は電話で直接確認すると確実です。
Q.3Dマンモグラフィを受けたら超音波検査は受けなくても大丈夫ですか?
A.3Dマンモグラフィは精度の高い検査ですが、超音波検査でしか見つけられない病変も存在します。特に乳腺が発達している若い方や高濃度乳房の方では、3Dマンモグラフィと併せて超音波検査を受けることで、より正確な診断が可能になります。そのため、医師と相談のうえ、必要に応じて併用するのが望ましいでしょう。
Q.豊胸手術をしていたら3Dマンモグラフィは受けられないですか?
A.豊胸手術をしていても、3Dマンモグラフィ検査を受けられる可能性はあります。
たとえば、ヒアルロン酸注入や脂肪注入などの方法であれば、術後に一定期間をあけることで検査が可能なケースもあります。しかし、検査結果や乳房の状態に影響が出ることも考えられますので、必ず予約時点で申告しましょう。
シリコンバックによる豊胸の場合も、病院によって対応が異なりますので、医療機関に相談のうえ判断を仰ぐと良いでしょう。
Q.痛みが心配な場合はどうすれば良いですか?
A.3Dマンモグラフィは、2枚の圧迫板で乳房を挟んで検査画像を撮影します。従来の2Dマンモグラフィよりも痛みは軽減されますが、痛みに弱い方はどうしても不安が残るでしょう。
「痛みの少ない方法で乳がん検査を受けたい」という場合は、ABUS(エイバス)による検査を受ける選択肢もあります。
ABUSに関する情報は、以下の記事で解説していますので、あわせてお読みください。
>>痛くない乳がん検診ってあるの?痛みが不安な方におすすめのABUS(エイバス)について解説
まとめ

この記事では、3Dマンモグラフィ(トモセンセシス)の内容や、検査時の痛みなどについて詳しく解説しました。
3Dマンモグラフィは、乳がんの早期発見と診断精度の向上を目的に導入された画像診断です。従来の2Dマンモグラフィと比べて、乳腺組織の重なりによる病変の見落としを防ぎやすく、特に乳腺密度が高い方にとっては有効性の高い検査方法といえるでしょう。
また、撮影時の乳房の圧迫が軽減される可能性があることから、痛みに対する負担もやや少なくなることが期待されます。がんの検出率や悪性腫瘍の識別精度の向上、再検査の回避などのメリットがあることも特徴です。
従来の2Dマンモグラフィより撮影時間が数秒長かったり、痛みを完全に無くすことはできなかったりする点についてはデメリットといえるかもしれません。しかし、それを上回るメリットが存在することも事実です。
乳がん検診を受ける方は、3Dマンモグラフィによる検査も検討してみましょう。
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