胃がんを早期発見するには?必要な検査や初期症状を解説
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「塩分の多い食事が胃がんの原因だと耳にした」「身近な人が胃がんを患った」
このようなことをきっかけに、もしかして自分も胃がんになるリスクが高いのでは?と不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。
「がん」と聞くと治すのが難しいイメージがあるかもしれませんが、胃がんは早期に治療を開始することで、完治する確率が高い疾患です。それでは、早期に発見し治療をするためにはどのような対策が必要でしょうか。
そこでこの記事では、胃がんを早期発見するために知っておきたい、胃がんの原因や胃がんになりやすい人の特徴、胃がんの初期症状や検査方法についてわかりやすく解説します。
胃がんとは?
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胃がんは、食べ物を一時的に貯え、殺菌・消化する臓器である胃に生じるがんです。日本では、年間約11万人が胃がんと診断されています。
がんを臓器別にみると、胃がんの罹患数は大腸、肺につづき3番目に多く、死亡数は男性では3位、女性では5位です。
胃がんの特徴として、症状が出始めた頃には、がんが固有筋層にまで達した「進行がん」の状態である可能性が高いことが挙げられます。
胃がんは、胃の壁のもっとも内側にある粘膜層に発生します。初期のうちは粘膜層にとどまりますが、進行すると徐々に粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の順に外側へと広がります。
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胃に痛みを感じるのは固有筋層に刺激があるときです。つまり、がんが固有筋層まで達しておらず、粘膜層や粘膜下層にとどまっている早期の段階では、自覚症状はほとんどないのです。
また、胃がんは進行すると転移(がん細胞がもともと発生した場所から離れた場所で増えること)の危険性が増大します。
胃がんで多くみられるリンパ節への転移では、胃の周辺のリンパ節転移にとどまっている場合、リンパ節郭清という摘出手術で治る可能性があります。遠隔転移や腹膜転移がある場合には、摘出手術で治すことは難しく、予後が悪くなる傾向があります。
しかし、胃がんは早期に治療開始できれば生存率が高い疾患です。そのため、早期発見・早期治療が非常に重要なのです。
参考:
国立がん研究センターがん情報サービス 「がん種別統計情報:胃」
国立がん研究センターがん情報サービス 「最新がん統計」
胃がんの3大原因
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胃がんは胃壁の粘膜層の細胞ががん化することで発生することを解説しました。では、どのような原因で胃の粘膜ががん化するのでしょうか。
胃がんの3大原因として、ピロリ菌感染、塩分の多い食事、喫煙が知られています。それぞれについて、詳しくみていきましょう。
ピロリ菌感染
ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)は、胃炎の原因と考えられている細菌です。食べ物や飲み物から体内に入り、胃の中に住み続け、胃の粘膜に炎症を引き起こすものと考えられています。
ピロリ菌感染により炎症が長期間続くと、胃の粘膜が萎縮した状態になります。萎縮が進んでいる人では、胃がんの発症リスクがさらに高まることがわかっています。
ピロリ菌感染陽性者の胃がん発症リスクは、陰性者の5倍、隠れた陽性者を含めると10倍になるとの報告があり、ピロリ菌感染は、胃がんの発症リスクを高める大きな要因といえるでしょう。
塩分の多い食事
多量の塩分摂取は胃がんの発症リスクを高めるといわれています。特に、いくら・塩辛などの塩分濃度が高い食品は要注意です。
これらの食品をよく食べる人では、胃がんの発症リスクが明らかに高くなったとの報告があり、総合的な食塩摂取量に加え、塩分濃度の高い食品の摂取は特にリスクになるものと考えられています。
動物実験などでは、高濃度の塩分が胃の粘膜を傷害することで、発がん物質の影響を受けやすくなることも示されています。
喫煙
たばこを吸う人は、吸わない人に比べて男性で1.8倍・女性で1.2倍胃がんになりやすいことが報告されています。これは、たばこの煙に含まれる発がん物質や、喫煙による活性酸素の発生が胃がん発症に関与しているものといわれています。
胃がんの初期症状
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胃がんは初期症状が乏しい疾患ですが、以下のような症状が発見のきっかけになることがあります。
これらは胃がんだけではなく胃炎や胃潰瘍の場合でもみられますが、気になる症状を自覚した場合は放置せずに医療機関を受診しましょう。
胃の痛み
胃がんの代表的な症状は、胃の痛み・不快感・違和感などです。
吐血
胃がんからの出血で吐血する場合もあります。
黒色便
胃がんの症状として、黒い便がみられる場合があります。胃で出血した血液が、消化管を通過する時に酸化され、黒くなるためです。
貧血
胃がんからの出血によって起こる貧血が、胃がん発見のきっかけになる場合もあります。
胃がんになりやすい人の特徴
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胃がんになりやすい人には、以下のような特徴があります。当てはまる項目が多くても実際には罹患しない場合もありますが、自身のリスクについて理解しておくことで予防や早期発見に役立つでしょう。
ピロリ菌に感染している人
ピロリ菌に感染している人は、胃がんを発症しやすいため、がん検診を欠かさず受けましょう。また、ピロリ菌感染により胃がんを発症されたご家族がいる場合、ご自身もピロリ菌の検査を受け、感染の有無を確認することをおすすめします。
塩分を過剰摂取している人
塩分を過剰摂取している人は胃がんになりやすく注意が必要です。胃がんの発症を予防するためには、食習慣を見直し、塩分を控えた食事をこころがけましょう。
1日あたりの塩分摂取量は、成人男性で7.5g未満・成人女性で6.5g未満が目標値とされています。また、1日あたりの塩分摂取量だけでなく、塩分濃度の濃い食品を食べすぎないことも意識しましょう。
喫煙習慣のある人
喫煙は胃がん発症のリスクを高めます。特に、1日10本以上など過度な喫煙は要注意です。胃がんの発症を予防するためには、禁煙をこころがけましょう。
また、自身がたばこを吸わない場合でも、受動喫煙による影響も考えられるため注意が必要です。たばこの煙に晒される時間が多い方は、なるべく避けることを意識すると良いでしょう。
果物・野菜をあまり食べない人
果物・野菜の摂取と胃がん発症には関係性があり、果物・野菜をほとんど食べない人は胃がんを発症しやすいことが報告されています。ただし、漬物は塩分を多く含むため胃がんの発症を高めるといわれています。
胃がんの発症を予防するためには、漬物以外の新鮮な野菜や果物を摂取するとよいでしょう。
飲酒習慣のある人
過度な飲酒は胃がんの発症リスクを高めることがわかっています。特に、お酒に弱い人(アルコールを体内で分解しにくい体質の人)が飲酒を続けると、胃がんを発症しやすいと考えられています。
胃がん予防のために、過度な飲酒を控えることはもちろん、顔が赤くなったり具合が悪くなったりしやすい方はお酒に弱い可能性が高いため、特に注意しましょう。
ストレスを抱えている人
ストレスによる胃の血流障害は、胃がんの原因になるといわれています。また、神経ストレスが胃がんの進行を加速させるメカニズムを解明した研究があり、ストレスは胃がんの進行を速める要因にもなり得るといわれています。
ストレスを避けることはできませんが、適度な運動を取り入れる・趣味の時間を持つ・好きな音楽を聴くなど、自分に合ったストレス発散方法を見つけておくと、胃がんの予防につながるでしょう。
中高年の男性
胃がんは50歳前後から、特に男性で発症しやすくなります。男性は女性の約2倍多く発生するとの統計データもあります。
50歳以降は胃がんのリスクが高まることを理解し、定期的に検査を受けるほか、体調の変化を気にかけるようにしましょう。
胃がんを早期発見するための症状チェックリスト
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胃がんは初期症状が乏しいですが、自身のリスクを把握し定期的な検査を欠かさないことで、早期発見が可能です。
以下のリスク因子や症状のチェックリストで当てはまる項目がある方は、がん検診や人間ドックなどで定期的に胃がんの検査を受けましょう。
リスク因子チェックリスト
- 現在ピロリ菌に感染している
- ピロリ菌を除菌したが、定期的な胃カメラ検査を受けていない
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍になったことがある
- 慢性胃炎と診断されたことがある
- 喫煙習慣がある
- 高塩分食品(たらこ・塩辛などの塩蔵品)をよく食べる(月2回以上など)
- 親または兄弟姉妹に胃がんを患った人がいる
- 野菜をあまり食べない
- お酒をよく飲む
- 40歳以上だが、定期的にバリウム検査や胃カメラ検査を受けていない
症状チェックリスト
- 胃もたれや胃の不快感がある
- 空腹時に胃が痛くなる
- 黒い便が出ることがある
- 食欲がなく、体重が減ってきた
- 便秘と下痢を繰り返す
- お腹の違和感や張ったような感じがある
- 貧血や立ちくらみがある
胃がんを早期発見するための検診・検査
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気になる症状があったり、リスク要因が高いことが分かったりしても、実際にどのような検査をするのかイメージできないと医療機関を受診することも不安に感じてしまいますよね。
ここでは、胃がんの早期発見のための検診・検査において代表的な胃部X線検査(バリウム検査)、胃内視鏡検査(胃カメラ)、胃がんリスク層別化検査(ABC検査)について解説します。
胃部X線検査(バリウム検査)
胃部X線検査(バリウム検査)は、造影剤のバリウムと、胃を膨らませるための発泡剤を飲んでから、胃のレントゲンを撮影する検査です。
一般的には苦痛が少ないといわれていますが、膨らんだ胃の粘膜にバリウムを付着させるために撮影台で身体を回転させたり、ゲップを我慢したりする必要があるため、その点について大変さを感じる方もいるかもしれません。
胃部X線検査は胃がんの可能性がある人を見つけるための検査であり、異常が指摘された場合には、精密検査として胃カメラ検査を受ける必要があります。
胃内視鏡検査(胃カメラ検査)
胃内視鏡検査(胃カメラ検査)では、小指ほどの太さの管の先端に超小型カメラが取り付けられた内視鏡を用い、食道、胃、十二指腸などの様子をモニターで観察します。
胃カメラには2種類あり、内視鏡を口から入れるものは「経口内視鏡」、鼻から入れるものは「経鼻内視鏡」とよばれています。
経口内視鏡は、経鼻内視鏡に比べて直径が太いため、検査画像が高画質です。明るいランプを当てて鮮明な画像を映し出したり、病変部の組織や細胞をその場で採取して病理検査(顕微鏡で観察し詳しい診断をおこなうこと)をすることも可能で、精密検査が必要な場合などにも適した方法です。
しかし、舌根が刺激されることで嘔吐反射(反射的にオエッとえづいてしまうこと)を起こしやすいというデメリットがあります。
経鼻内視鏡は、舌根に内視鏡が触れにくく嘔吐反射を生じにくいとされています。経口内視鏡に比べ痛みや不快感が少なく、検査中に医師と会話できるなどのメリットもあり、検診では一般的に経鼻内視鏡が推奨されます。
胃がんリスク層別化検査(ABC検査)
胃がんリスク層別化検査(ABC検査)では、「ピロリ菌感染の有無」と「胃粘膜の萎縮度」を血液検査で調べ、将来胃がんになりやすい状態かどうかを判定します。
原則として生涯に一度、成人以降の健康診断や特定健診の際に受けることが推奨されていますが、将来的な胃がん発症リスクを評価する目的であり、胃がん検診に代わるものではないことを理解しておきましょう。
ただし、過去にピロリ菌の感染有無を調べたことがある方や、ピロリ菌除菌治療を受けたことがある方は、ABC検査の対象とはならない可能性があります。
また、以下に当てはまる方は正確な結果が得られない可能性があるため、検査を受ける前に医師と相談することをおすすめします。
- 食道・胃・十二指腸に関する疾患を有している
- 胃の切除術を受けたことがある
- プロトンポンプ阻害剤(胃酸を抑える薬)を2ヶ月以内に服用した
- 抗菌薬を長期間服用した
- 腎機能障害がある
胃がんの生存率と早期発見の重要性
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胃がんは、転移がない早期の段階で治療した場合の5年生存率が96.7%と高い数値となっています。その後、隣接する臓器への浸潤や他の臓器への遠隔転移はないがリンパ節への転移がある例での5年生存率は51.9%、肝臓・肺・脳・骨などへの遠隔転移がみられる例の5年生存率は6.6%です。
これらの数値をみれば、胃がんにおける早期発見・早期治療の重要性は一目瞭然でしょう。
胃がんは、検診を受けることで、早期の状態で見つけやすいがんです。無症状のうちに検診を受け早期に発見できれば、身体的・精神的に負担の少ない治療方法を選択でき、治療後も変わらず元の生活に戻れる可能性が高くなります。
このことからも、胃がんを早期発見することは重要であるといえます。
参考:国立がん研究センターがん情報サービス 「がん種別統計情報:胃」
まとめ~定期的な健康診断で胃がんの早期発見を目指そう~
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胃がんは初期の自覚症状が乏しいため、早期に発見するためには定期的な検査が重要となります。早期に発見し治療を開始できれば、負担の少ない治療方法を選択できるほか、予後も良い傾向があります。
胃がんになるリスクが高い人の特徴として、ピロリ菌に感染している人・塩分を過剰摂取している人・喫煙習慣のある人・果物や野菜をあまり食べない人・飲酒習慣のある人・50歳以上の男性などが挙げられます。
上記や、先にご紹介したチェックリストで多くの項目に当てはまる方は、予防に努めるほか体調の変化に特に注意しましょう。
胃がんの検査としては、胃部X線検査(バリウム検査)や胃内視鏡検査(胃カメラ検査)などが実施されることが多いです。
どちらも比較的負担の少ない検査ですので、ためらわずに医療機関を受診し早期発見を目指しましょう。
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