胃カメラは鼻からと口からどっちが楽?痛みや精度の違いなど解説
過去の経験や周りから聞いた話で、胃カメラというと「痛い・苦しい」検査だとイメージする方が多のではないでしょうか。
健康診断や人間ドックなどで胃カメラを受けるなら「できるだけ楽な方法で受けたい」と思いますよね。
胃カメラの痛みは、挿入方法の違いのほかに、使用する検査機器によっても変わります。検査方法によって精度も変わるため、痛みの少なさだけではなく、自分に合っているかどうかを理解したうえで選択することが大切です。
そこでこの記事では、胃カメラを入れる楽な方法を説明したうえで、鼻からと口からの痛みや精度の違い、向いている人の特徴などを解説します。
胃カメラで楽なのは一般的に「鼻から」

胃カメラを入れる方法には 鼻からの「経鼻」と、口から入れる「経口」の2種類があります。そのうち、経鼻のほうが楽だと感じる方が多い傾向にあります。
その理由としては、内視鏡が喉の奥に当たりづらく、嘔吐反射(おえっとなる反応)が起きにくいためと考えられています。
胃カメラとは、チューブ状の内視鏡(胃カメラ)を体内に入れて食道・胃・十二指腸の状態を観察する検査のことです。正式名称は「上部消化管内視鏡検査」と呼ばれ、胃炎や十二指腸潰瘍、ピロリ菌感染の有無、胃がん・食道がんの早期発見などに有効な検査とされています。
内視鏡の先端には小型カメラが搭載されていて、カメラが撮影した映像はモニターに出力されます。医師が内視鏡を操作しつつモニターを見て、胃の内部を観察できる仕組みです。使用する内視鏡の種類によってはポリープの切除もおこなえます。
経口で辛さを感じた方でも、経鼻であれば和らぐかもしれません。
ただし、鼻の通り道が狭かったり曲がっていたり、アレルギーなどでむくみが生じていたりなどにより、経鼻が適さない場合があります。
どっちが良いか迷ったら、医療機関へ事前に相談のうえ決めるようにしましょう。
胃カメラを鼻から挿入するときの流れと特徴

胃カメラを鼻から挿入する「経鼻内視鏡検査」では、鼻腔にある中鼻道(または下鼻道)という空間からのどを通過し、食道・胃・十二指腸までのルートで胃カメラを通します。
また、胃カメラを入れるときは、検査の精度向上や苦痛軽減のためにさまざまな準備をします。検査当日の大まかな流れを紹介しますので、どのようなことをするのかを把握しておきましょう。
- 前処置室で消泡剤を飲む
消泡剤は胃の粘液の泡を消す薬です。消泡剤をあらかじめ飲むことで、検査部位が見えやすくなります。 - 血管収縮剤を鼻腔に噴霧する
血管収縮剤は鼻腔を広げて胃カメラの通りを良くするとともに、鼻出血を予防する効果があります。 - 鼻腔に麻酔をする
鼻腔内部に数回に分けて麻酔をすることで、胃カメラを挿入するときの痛みを感じにくくなります。麻酔の方法は「鼻腔への噴霧」「スティックによる直接塗布」などがあります。あわせて、のどに麻酔をおこなう場合もあります。 - 検査室で胃カメラを鼻から挿入する
検査台の上で、からだの左側を下にして横になります。検査中は肩・首・のどの力を抜きましょう。
経鼻内視鏡検査は胃カメラが口を通らない方法であり、検査中も医師と会話できます。気になることがあるときや苦しさがあるときは、医師に話しかけるとよいでしょう。
経鼻挿入の痛みはどのくらい?
経鼻挿入では、胃カメラが舌の根元を通らないため、嘔吐感や息苦しさを感じにくいことがメリットです。血管収縮剤や鼻腔麻酔を使うことで鼻の刺激も少なく済み、挿入時の痛みを抑えられます。
ただし、人によっては挿入時に鼻の痛みや違和感をおぼえる場合があります。痛みの表現で多いのが「鼻に水が入ったときの感覚」「鼻がツンとするような不快感」です。
経鼻挿入で鼻腔の形状が胃カメラのサイズに対して狭かったり、鼻炎によって鼻の粘膜が過敏になっていたりすることが、主な痛みの原因といわれています。
経鼻で使う胃カメラの精度は?
鼻から胃カメラを入れる経鼻内視鏡検査は、口から胃カメラを入れる方法と比較して検査の精度が低くなるといわれています。検査精度に違いが出る原因は、使用する胃カメラが異なるためです。
経鼻内視鏡検査で使われる胃カメラの直径は5mmであり、口から入れる場合に使われる胃カメラよりも直径が細くなっています。胃カメラの直径が細いと先端部のカメラも小さくなり、モニターに映される画像の解像度が低くなります。その結果として、検査精度に差が出るのです。
ただし、近年の経鼻内視鏡はカメラの解像度が向上していて、口から胃カメラを入れる場合と比較しても大きな違いは出にくくなっています。特に、光の波長の変化により病変を認識しやすくする「画像強調機能」がある経鼻内視鏡は、鼻から胃カメラを入れる方法であっても精度が担保されるでしょう。
胃カメラを口から挿入するときの流れと特徴

胃カメラを口から挿入する方法は「経口内視鏡検査」と呼ばれます。口からのど、食道・胃・十二指腸へと胃カメラを通すルートです。
経口内視鏡検査においても、経鼻のときと同様に検査精度の向上や痛みの軽減を目的とした以下の準備を行います。
- 前処置室で消泡剤を飲む
胃の粘液が作る泡を消すために消泡剤を飲みます。 - のどの麻酔薬を飲む
のどの麻酔薬をのどに溜めたまま数分待った後、ゆっくりと飲み込みます(施設によっては吐き出します)。麻酔を追加したり、鎮静剤や鎮痙剤(胃のぜん動を抑える)を使用したりする場合もあります。 - 検査室で胃カメラを経口挿入する 検査台の上で、からだの左側を下にして横向きになります。その後にマウスピースを口に咥えて、マウスピースに胃カメラを通して挿入します。
なお、経口内視鏡検査では内視鏡を口に通すため、検査中は自由に話すことができません。医師に対してYES/NOや気分を伝えたいときは、ジェスチャーなどによるコミュニケーションが必要となります。
経口挿入の痛みはどのくらい?
経口内視鏡検査は、胃カメラが喉元を通るときに痛みや苦しさを感じやすい傾向にあります。
特に多いのが、胃カメラが舌根に触れることで起こる嘔吐反射による苦しさです。嘔吐反射は身体の防御反応であるためコントロールが難しいものの、肩と首の力を抜いて楽な姿勢を取ると防ぎやすくなります。
胃カメラの挿入時に胃壁が圧迫されて、痛みを感じるケースもあります。
また、胃のヒダとヒダの間を観察する目的で空気を入れるとき、膨脹感をおぼえてゲップが出やすくなります。ゲップをすると胃の空気が抜けてしまい、再度空気を注入する必要があるため、検査時間が延びてしまいます。
嘔吐反射や検査中のゲップを抑えるには、鎮静剤の投与が有効です。身体がリラックスし、痛みや苦しさを感じにくい状態で検査を受けられます。ただし、検査後に1時間程度休む必要があるほか、まれに血圧低下や呼吸抑制などの副作用が出るケースもあります。
鎮静剤の使用は医師と十分に相談したうえで決めるとよいでしょう。
経口で使う胃カメラの精度は?
経口内視鏡検査で使用する胃カメラは直径が9mm前後と、直径が太くなっています。経鼻内視鏡検査の胃カメラよりも画像を鮮明に撮影でき、高い精度での画像検査が期待できる点が特徴です。
また、カメラのアングル操作もしやすく、小さな病変であっても詳細に観察できることは、経口内視鏡ならではの強みといえるでしょう。対象部位の観察がしやすいことは検査時間の短縮につながり、検査による痛みを感じる時間を減らすメリットもあります。
胃カメラの鼻からと口からはどのような人に向いている?

経鼻内視鏡検査と経口内視鏡検査の特徴や痛み・精度の違いをまとめると、以下の表のとおりです。
| 経鼻内視鏡検査 | 経口内視鏡検査 | |
|---|---|---|
| 主な特徴 | ・胃カメラを鼻から入れる検査方法 ・鎮静剤なしでも痛みを感じにくい ・検査中も会話できる ・ポリープの切除はできない | ・胃カメラを口から入れる検査方法 ・鎮静剤を投与する場合がある ・検査中の会話はできない ・発見したポリープを切除できる |
| 検査中の痛み | ・痛みや嘔吐感は少ない ・人によっては鼻がツンとする感覚がある | ・痛みや嘔吐感を引き起こしやすい |
| 検査の精度 | ・経口と比較するとカメラの解像度が低く、検査精度が低下する可能性がある | ・高解像度のカメラにより高い検査精度を期待できる |
痛みが少なく楽なのは経鼻内視鏡検査であるものの、検査精度は経口内視鏡検査のほうが高く、双方にメリット・デメリットがあります。どちらの検査方法が向いているかは人によって異なるため、自分にとってメリットが多いほうを選びましょう。
最後に、胃カメラの「鼻から」と「口から」について、それぞれが向いている人の特徴を紹介します。
胃カメラが初めての人や嘔吐反射が不安な人は「鼻から」がおすすめ
胃カメラを「鼻から」入れる経鼻内視鏡検査がおすすめなのは、胃カメラを初めて受ける人です。
経鼻内視鏡検査は胃カメラの直径が細いため、経口よりも痛みや不快感を抑えらる点で、胃カメラが初めての人も安心して受けやすい検査です。
また、経口内視鏡検査で嘔吐反射を起こした経験があり、胃カメラに苦手意識を持っている人も経鼻内視鏡検査のほうが合っている可能性があるでしょう。経鼻内視鏡検査は胃カメラが舌根に触れないため嘔吐反射を起こしにくく、胃カメラ特有の吐き気を抑えられます。
経鼻内視鏡検査は、基本的に鎮静剤を使わずに受けられます。検査後に鎮静剤の効果が切れるまで待つ必要がないため、胃カメラを終えたらすぐに仕事に戻ったり、車で帰宅したりしたい人にも向いているといえます。
「口から」は検査の精度を優先したい人や鼻の病気がある人に向いている
胃カメラを「口から」入れる経口内視鏡検査は、食道・胃・十二指腸についてできるだけ高精度な検査を受けたい人に向いています。
経口内視鏡検査の特徴は、経鼻内視鏡検査よりも胃カメラの直径が太いことです。高解像度・高機能の胃カメラによって検査部位を詳細に観察できて、病変の早期発見を期待できます。
さらに、経口内視鏡検査であれば発見したポリープをすぐに切除できます。食道や胃の病気があることが分かっている場合は、経口内視鏡検査を受けたほうがよいでしょう。
また、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などの鼻の病気がある人や、鼻腔が極端に狭い人は、胃カメラを鼻に通すことができず経鼻内視鏡検査を受けられない場合があります。胃カメラを鼻から入れられない人にとっても、経口内視鏡検査は解決策となる検査方法です。
医療機関によっては口から挿入するときでも細い胃カメラを使用できる場合があります。胃カメラを鼻から入れることが難しいものの、口からの挿入で痛みや吐き気を感じたくない人は、胃カメラを担当する医師に相談してみるとよいでしょう。
まとめ

胃カメラの挿入方法には鼻から入れる経鼻内視鏡検査と、口から入れる経口内視鏡検査の2つがあります。一般的には「鼻から」のほうが楽だと感じる方が多い傾向にあります。
経鼻内視鏡検査は痛みや吐き気を抑えやすく、鎮静剤を使用せずに受けられます。一方で、経口内視鏡検査は高い検査精度が期待でき、ポリープの切除もできることがメリットです。
鼻からと口から、どちらで胃カメラを受けるのが向いているかは、人によって異なります。向いている人の特徴を参考に、自分に合っている検査方法を検討しましょう。
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