食道がんを早期発見するにはどのような検査方法が良い?初期症状やなりやすい人の特徴も解説

食道がんを早期発見するにはどのような検査方法が良い?初期症状やなりやすい人の特徴も解説

「食道がんに罹患した家族がいる」「喫煙・飲酒の習慣がある」
このような理由から、自分もがんになるのではないかと不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

食道がんは“見つけづらいがん”といわれていますが、早期発見するためには注意すべき症状を知り、適切な検査方法を選ぶことが大切です。

この記事では、食道がんになりやすい人の特徴や、初期症状、そして早期発見のための検査方法などについてご紹介します。

食道がんとは

食道がんとは

食道がんとは、のどと胃をつなぐ「食道」にできる悪性腫瘍です。食道の粘膜から発生し、徐々に食道壁の深部へと広がっていきます。

食道の周囲には気管や肺、大動脈といった重要な臓器があり、進行に伴ってこれらの臓器へ浸潤することも少なくありません。食道がん患者の約23%においては多臓器への転移が確認され、リンパ節や血管を介して肺や肝臓などへ転移が及ぶこともあります。

発症しやすい人の特徴として、年齢が60~70代と高齢であること、性別は男性に多いことが挙げられます。喫煙や過度の飲酒といった習慣もリスク因子として知られています。

参考:日本食道学会「食道がん治療後の経過観察」

食道がんの進行スピード

食道がんは、同じく消化器官にできる胃がんや大腸がんと比べて進行が速いといわれています。その理由は、食道の壁内や周辺に血管やリンパ管が多く存在しているためです。

がん細胞は、リンパ液や血液の流れに乗って拡散する性質があるため、肺や肝臓などへの転移も比較的早く進行する傾向があります。発見・診断された時点で、リンパ節や他の臓器にがんが広がっているケースも少なくありません。

そのため、早期発見することが治療の予後や回復の見通しに大きく関わります。

食道がんの5年生存率

食道がんの5年生存率は、2009~2011年に診断された患者を対象としたデータで、男女合わせて41.5%と報告されています。他の多くのがんと比較すると低い数値であり、依然として治療の難しいがんの一つです。

これは、初期症状が乏しく気付かないうちに進行してしまったり、構造上の理由で他の臓器へ転移しやすかったりするためと考えられています。

なお、5年生存率は発見されたステージ(病期)によって異なります。早期に発見され治療を開始できた場合の生存率は、進行してから発見された場合に比べて高い傾向にあります。

参考:公益財団法人 がん研究振興財団「がんの統計2021」

食道がんになりやすい人の特徴

食道がんになりやすい人の特徴

つぎに、食道がんにリスク因子について見てみましょう。食道がんになりやすい人の特徴は以下のとおりです。

  • 喫煙習慣がある人
  • 過度に飲酒をする人
  • 食生活の乱れがある人

喫煙習慣がある人

タバコを吸う人は、吸わない人に比べて約3倍も食道がんを発症しやすいといわれています。タバコには多くの発がん性物質が含まれているだけでなく、逆流性食道炎を引き起こし食道を傷つける原因にもなります。長年続けることでがんのリスクが大幅に上がるため、食道がんを予防するためには禁煙が極めて重要です。

過度に飲酒をする人

毎日のように多量の飲酒を続けると、食道がんの発症リスクが高まります。特に飲酒後に顔が赤くなる「フラッシング体質」の人は注意が必要です。これはアルコールを分解する酵素の働きが弱いために起こる現象で、フラッシングのある人はそうでない人に比べて5~10倍も食道がんを発症しやすいとされています。

日々の飲酒量を控えることは、食道がん予防のための大切な取り組みです。

食生活の乱れがある人

栄養バランスが崩れている人や、野菜や果物をあまり食べない生活をしている人も食道がんのリスクが高まります。ビタミンや抗酸化物質が不足すると、細胞の修復や防御機能が弱まり、がん細胞が発生しやすくなる可能性があるためです。

その他、塩分や脂質の多い食事を日頃から続けている場合もリスク要因となります。日常的にバランスの良い食事を心がけることが大切です。

食道がんの症状

食道がんの症状

食道がんは、初期にはほとんど自覚症状がないことが多いですが、わずかな違和感や異常を見逃さなければ早期に発見することもできるでしょう。

注意すべきサインをご紹介しますので、気になる症状がある場合には躊躇せずに医療機関を受診しましょう。

早期発見に重要な症状

食道がんの初期には、胸の違和感があらわれることがあります。具体的には、飲食物を飲み込む際に胸の奥がチクチクするような痛みを感じたり、熱い飲み物を飲んだときにしみるような感覚が出たりするなどです。

こうした症状は一時的にしか起こらないことも多いため、つい軽視してしまいがちですが、早期発見の手がかりになる重要なサインです。

進行したときの症状

食道がんが進行すると、がんが大きくなり食道が狭くなるため、飲食物が喉でつかえるようになります。次第にやわらかい食べ物しか食べられなくなり、さらに進行すると水や唾液すら飲み込めなくなる事態にまでおよぶ場合もあります。

飲食の際に、つかえたりむせたりすることが増えたと感じる場合、一度検査を受けてみると良いでしょう。

また、気管が圧迫されることにより呼吸困難や咳などの呼吸器症状があらわれたり、声がかれたりすることもあります。 

食道がんを早期発見するための検査方法

食道がんを早期発見するための検査方法

食道がんを早期発見するための検査方法は、以下が挙げられます。

  • 胃カメラ検査
  • バリウム検査
  • 超音波検査
  • CT検査・MRI検査
  • PET検査
  • 腫瘍マーカー検査

特に胃カメラ検査やバリウム検査は、自覚症状がなくても人間ドックなどで定期的に実施することが大切です。詳しい内容を見ていきましょう。

胃カメラ検査

胃カメラによる検査は、食道がんの早期発見において最も重要とされています。口や鼻から細いカメラを挿入して食道を直接観察し、がんの有無を確認します。腫瘍や粘膜の異常を確認するだけでなく、病変の深さや広がりを調べることも可能です。

特殊な光を用いるNBI(狭帯域光観察)や、粘膜を染め出すヨード染色を使い、病変が見えやすくなるようにしたうえで検査を実施する場合もあります。さらに、内視鏡に超音波カメラ(EUS)を組み合わせれば、がんの深達度や周囲臓器への広がりも調べられます。

バリウム検査

バリウム検査では、造影剤(バリウム)を飲んだ状態で、X線にて食道や胃の粘膜の形を映し出します。粘膜にできた凹凸や狭窄を確認でき、進行がんの発見に有効です。

変化が小さいがんの発見においては、胃カメラ検査のほうが得意とされていますが、胃カメラ検査が不得意とする病変(スキルス性胃がんなど)を見つけられるメリットも存在あします。また、検査費用が安く、短時間で完了できる点もバリウム検査の特徴です。

超音波(エコー)検査

超音波検査では、体の表面にプローブをあてて、臓器やリンパ節の状態を画像化して調べます。痛みや辛さなど、精神的・肉体的なストレスが少なく、比較的手軽におこなえる検査です。

主に、食道がんがリンパ節や肝臓などの腹部臓器に転移していないか確認する目的で実施されます。

CT検査・MRI検査

CT検査やMRI検査は、胸部や腹部の詳細な断面画像を撮影し、食道がんが他の臓器やリンパ節に転移していないか詳しく調べます。特に、がんの進行度を判定したり、治療方針を決定したりするうえで重要な役割を果たします。手術や放射線治療をおこなう際にも欠かせない検査です。

PET検査

PET検査は、放射線を含んだブドウ糖類似物質(FDG)を体内に注入し、その分布を画像画像化する方法です。がん細胞は正常細胞よりも多くのブドウ糖を消費する特徴があるため、ブドウ糖類似物質の集まる場所を確認することで、体のどの部分にがんが広がっているかを調べられます。

腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカー検査では、血液中に存在するがんの特異物質(腫瘍マーカー)を調べ、スクリーニングします。食道がんの検査においては、SCC(扁平上皮がん関連抗原)やCEA(がん胎児性抗原)と呼ばれる種類の腫瘍マーカーについて、基準値を超えていないかを確認します。

腫瘍マーカーは、がんが発生していなくても検出される場合があります。そのため、他の検査結果と組み合わせてデータを用いて、総合的に評価するために活用するのが適切です。

食道がんの早期発見後の治療

食道がんの早期発見後の治療

万が一食道がんが発見された場合に、どのような治療がおこなわれるのかについても知っておきましょう。具体的な治療内容は進行度や転移の有無などによって異なりますが、基本的には以下が選択肢として挙げられます。

  • 内視鏡治療
  • 外科的手術
  • 化学放射線療法

内視鏡治療

内視鏡治療は、口から挿入した内視鏡を用いて病変部の粘膜を切除する方法です。リンパ節転移がなく、食道の粘膜層にとどまっている比較的早期の症例に適応されます。

体への負担が少なく、体にメスを入れずに済むためを、入院期間も短く済むのが特徴です。治療後は数日で食事を再開できることも多く、早期発見だからこそ適応できる治療法ともいえます。

外科的手術

がんが粘膜下層より深い場合や、リンパ節転移が疑われる場合には、外科的手術が選択される場合があります。食道の病変部だけでなく、リンパ節や胃の一部など周辺の組織もあわせて切除するケースもあります。切除した食道は、胃や腸を用いて再建しますが、それによって食道の機能を補うケースも多いです。

合併症として、反回神経の損傷によって声がかれたり、咽頭・喉頭の切除によって発声に支障をきたしたりする可能性があります。入院は通常2~4週間必要で、体力的にも負担の大きい治療です。

化学放射線療法

化学放射線療法は、抗がん剤と放射線を併用してがんを縮小・消失させる治療法です。手術が困難な症例や、がんが大きい場合に用いられます。また、手術と組み合わせておこなう場合もあります。

抗がん剤による治療では、吐き気や倦怠感、口内炎、食欲不振など副作用が強く出現し、日常生活に支障をきたすケースもあります。しかし、食道を温存しながら治療できる可能性がある点がメリットです。

食道がんの早期発見に関するQ&A

食道がんの早期発見に関するQ&A

食道がんの早期発見でよくある質問についてまとめました。

食道がんの早期発見は難しいですか?

食道がんは早期の段階ではほとんど症状があらわれず、自覚することが難しいのが特徴です。そのため、病状が進行してから診断されることが少なくありません。

しかし、がん検診や人間ドックの際に必要な検査を定期的に受けていれば、早期発見できる可能性は十分にあります。特に喫煙や飲酒習慣のある人は、定期的な検査が推奨されます。

食道がんのステージ1の症状を教えてください

食道がんは、ステージ1ではほとんど症状が出ない場合が多いですが、まれに飲食物を飲み込んだときの喉や胸の違和感、熱い飲み物を飲んだ際の軽いしみるような感覚が出ることがあります。

食道がんのステージは、がんの深さ・リンパ節転移の有無・遠隔転移の有無によって分類されます。ステージ1はがんが粘膜下層にとどまり、リンパ節転移や遠隔転移がない状態です。

食道がんの検査はどれくらいの頻度で受けるべきですか?

喫煙や飲酒の習慣などリスク因子がある場合は半年〜1年に1回、それ以外の方は1年に1回を目安にすると良いでしょう。

なお、食道がんの治療を受けた方については、医師の指示にしたがって定期検査をするようにしてください。

まとめ

食道がんは気づいたときには進行していることが多い疾患

食道がんは初期には自覚症状がほとんどなく、気づいたときには進行していることが多い疾患です。そのため、早期発見が治療成績や予後を大きく左右します。

喫煙や飲酒、食生活の乱れといった習慣が大きなリスク因子となるため、当てはまる方は注意が必要です。

初期症状として、胸の違和感や飲み込みにくさ、声が枯れるなどの症状があらわれることもありますが、一時的なものとして見落とされやすいのが現状です。

胃カメラをはじめとした検査を定期的に受けることで、無症状のうちに病変を見つける可能性が高まります。年1回の人間ドックや生活習慣の見直しを心がけ、食道がんの早期発見と予防に取り組むようにしましょう。

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