痛くない乳がん検診ってあるの?痛みが不安な方におすすめのABUS(エイバス)について解説
「痛くない乳がん検診があるってほんと?」
「ABUS(エイバス)とはどんな検査なの?」
乳がんは、日本人女性が最もかかりやすいがんといわれていますが、乳がん検診の受診率は約47%しかありません。その理由の一つは、乳がん検診に対して「痛い」「恥ずかしい」というイメージがあるからでしょう。しかし、乳がんは早期発見により乳房の温存という選択肢もあり、早期治療によって治る可能性が高い疾患のため、定期的な検診が大変重要なのです。
そこでこの記事では、痛みの少ない乳がん検査ABUS(エイバス)について、従来の検査との違いや検査の流れ、費用、メリット・デメリットなどを解説します。痛くない乳がん検診の方法を探している方や、ABUSでのがん検診を検討している方は参考にしてください。
乳がんとは
乳がんは、乳房を構成する乳腺組織にできる悪性腫瘍です。日本人女性が最もかかりやすく、他のがんに比べて若い世代でも発症しやすいことも特徴で、30代前半から増え始め40代後半にピークを迎えます。
乳がんの症状
乳がんの症状として一番多いのは「しこり」です。お風呂で体を洗っているとき乳房にしこりを感じたことが、医師の診察を受けるきっかけになる方も多くいます。乳がんの初期はあまり痛みもないため、しこり以外では症状を感じにくいでしょう。がんが進行してくると、乳房の皮膚表面のただれ・乳房の部分的なくぼみ・乳房が左右非対称など見た目の変化や、乳頭からの分泌物がみられるようになります。
しこりは、乳がん以外の疾患(乳腺症など)でも発生します。気になる症状がある場合は、早めに医師の診察を受けるようにしましょう。
乳がんの発見が難しいデンスブレスト(高濃度乳房)について
乳房は、主に乳腺組織と脂肪組織で構成されており、乳腺組織の割合が高い状態をデンスブレストといいます。日本人は欧米人と比べて乳腺の密度が高く、デンスブレストとの人が多いといわれています。デンスブレストは病気ではありませんが、多くの乳がん検診でされているマンモグラフィ検査では白く映し出されてしこりと区別がつきづらく、がんが見つかりにくくなる可能性があります。
乳がん検診の重要性
乳がんの5年生存率を、がんのみが死因となる場合の生存率「ネット・サバイバル」を用いて比較してみましょう。
ステージ | ネット・サバイバル |
---|---|
全体 | 91.6% |
Ⅰ期 | 98.9% |
Ⅱ期 | 94.6% |
Ⅲ期 | 80.6% |
Ⅳ期 | 39.8% |
参考:国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム 乳がん5年生存率」
がんのステージがあがって進行していくと、5年生存率は大きく低下することから、早期発見の重要性がうかがえます。しかし、2022年の乳がん検診の受診率は約47%と、全体の半分以下となっています。早期発見のためにも乳がん検診を定期的に受けるようにしましょう。
乳がん検診の検査方法とは
乳がん検診を受けるにあたり、その検査方法にはどのような選択肢があるのでしょうか。乳がん検診の検査方法は、主に次の3つに分類されます。それぞれ詳しく解説します。
- 超音波(エコー)検査
- マンモグラフィ
- 乳房MRI検査
超音波(エコー)検査
超音波検査は、乳房内の病変有無や、しこりの性状と大きさ、わきの下などにあるリンパ節への転移を調べる検査です。超音波が出る小さな機械(プローブ)を乳房の表面にあてながら画像を確認します。
超音波検査では、乳腺は白く、乳がん病変の多くは黒く映ります。そのため、デンスブレストの方の場合は超音波検査が乳がんの発見に役立つことがあります。
また、放射線被ばくがないため妊娠中でも検査が可能です。ABUSは超音波検査の一種に分類されます。
マンモグラフィ
マンモグラフィは乳房専用のX線検査です。初期の乳がんを発見して死亡率を下げることが証明されており、主に自治体の検診で取り入れられています。
乳房を2枚の板で挟んで広げた状態でX線撮影をするため、痛みを感じる方もいます。しこりになる前の、石灰化した小さな乳がんを発見しやすいといわれていますが、デンスブレストで全体が白く映っている場合は病変が見つけられない可能性もあります。
また、X線検査であるため乳房に対する放射線被ばくがあります。ただし1年間に受ける自然放射線量の50分の1程度とであり、健康への影響はほとんど心配ありません。
乳房MRI検査
乳房MRI検査は、MRI装置を使って乳がんを調べる検査です。画像のコントラストを調整できたり、複数の方向・角度から撮影できることから、がんを発見しやすいといわれています。
また、放射線被ばくもなく、マンモグラフィのように痛みも伴いません。ただし、検出感度を高めるために造影剤を使用する場合もあるため、家族歴などから乳がんのリスクが高いと考えられる方や、乳がんが疑われる方に対して用いられることが多い検査です。
ABUS(エイバス)とは
乳がんの検査をする方法にはいくつかの種類があることが分かりました。その中でも超音波(エコー)検査に分類されるABUSには、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは、ABUSの特徴や従来の超音波検査の違い、ABUSが痛くない理由、検査費用について解説していきます。
ABUSの特徴
ABUSには、「放射線の被ばくがなく痛みが少ない」といった従来の超音波検査ならではのメリットに加え、検査のバラツキを少なくし、常に鮮明で標準化された画像を撮影できるというメリットがあります。また、マンモグラフィでは診断が難しいデンスブレストの方の検査でも、乳房組織の全体像を鮮明に映し出せるため、病変の可能性のあるしこりを発見することが容易です。
ABUSが痛くない理由
ABUSはスキャンヘッドを胸に押し当てるだけで、乳房内を画像に映し出すことができます。柔らかい曲線の形状をしたスキャンヘッドによって、様々な胸の形に無理なく自然にフィットするため、ABUSでの検査は痛くありません。また、3段階の圧力レベルから乳房の形や弾性に応じた最適な圧力を選択する性能を備えているため、スキャンヘッドを乳房に均一に密着できることも、ABUSが痛くない理由の1つです。
ABUSと従来の超音波検査の違い
従来の超音波検査とABUSの違いは、主に以下の3のポイントにあります。
- 乳房に当てる超音波プローブやスキャンヘッドに組み込まれた探触子(※)の幅
- 検査者の検査スキルへの依存度
- 画像の鮮明度とボリューム
(※)超音波を発生したり受信したりするパーツのこと
従来の超音波検査では、乳房に当てる超音波用のプローブに組み込まれた探触子の幅は約5cmで、検査者がプローブを手で持ち乳房の上を動かして撮影します。撮影が手動であるため、画像の写り方が検査者のスキルに左右される面があります。また、小さな石灰化を見つけにくかったり、良性のしこりも映ることから、読影する医師の力量も問われます。
ABUSの場合は、スキャンヘッドに約15cm幅の探触子が組み込まれており、スキャンヘッドを乳房に押し当てるだけで自動で撮影できます。そのため検査者の検査スキルはあまり影響しません。
あわせて、従来の超音波検査では、検査中に検査者が撮影した画像のみがデータとして保存され診断に用いられますが、ABUSではあらゆる角度からとらえた乳房全体の画像が鮮明に映し出され、乳房を立体的に確認できます。また、検査者が撮影した画像だけでなく、検査中の全ての画像が保存されるため、画像のボリュームが多いのも特徴です。確認したい部分を効率的に比較読影しやすいといえます。
ABUSの費用
ABUSによる検査の費用は、一般的に6,000円前後です。マンモグラフィと併用して検査をおこなう乳がん検診や人間ドックもあり、その場合セットで12,000円前後の医療機関が多いようです。
ABUSの検査の流れ
ABUSの検査の流れを確認しておきましょう。どのように検査をするのかを知っておくと、不安を感じずに検査に臨めます。
- 検査着を脱いで、仰向けで横になります。
- 専用のローション(白い乳液状のもの)を胸に広げます。
- 超音波のスキャンヘッドを乳房に当てて検査を開始します。
- ABUSでは、スキャンヘッド自体が動くのではなく、乳房に押し当てるスキャンヘッドの中で探触子が移動して撮影します。この時、痛みやくすぐったい感じがする場合もあります。探触子が動いている間は、会話をせずに待ちましょう。
- 左右それぞれ3回撮影し、計6回の撮影が済んだら終了です。検査時間は15分程度です。
ABUSのメリットとデメリット
ここまでABUSの特徴や他の検査との違いについてお伝えしてきました。ここでは、ABUSのメリットとデメリットについてまとめています。
ABUSのメリット
- 検査の時間が短く済みます(所要時間約15分)。
- 検査時の痛みがほとんどありません。
- 乳房に触れられることなく検査ができます。
- 放射線の被ばくの心配がありません。
- 従来の超音波検査ではわかりにくい、デンスブレストの方や、乳腺組織が豊富な年齢の若い方の検査にも適しています。
- 従来の超音波検査では検査を行う人によって病変を見つけられないということもあったが、ABUSでは検査者の検査スキルに左右されにくい性能を持っています。
- 乳房を立体的に把握しやすい画像が撮影されます。
- 検査の後でも、すべての画像の再現ができるため、いつでも検査を見直すことができます。
ABUSのメリットは、検査のときに痛くないということ以外に、検査者のスキルによるバラツキや、患者や検査装置などの検査条件によるバラツキを抑えるという特徴があります。
ABUSのデメリット
- 体型によっては、検査が難しいことがあります。
- 乳房が大きく深部まで超音波が届かない場合があります。
- 検査と同時に組織の採取はできません。
- スキャンヘッドを乳房に当てて検査するため、押されるような痛みを感じる場合もあります。
- 乳がんのサインである小さな石灰化をみつけにくいため、病変を見逃す可能性があります。
- 良性のしこりも映ってしまうため、画像診断力が必要となります。
石灰化病変の広がりの把握は、マンモグラフィの方が得意です。乳がん検診では、ABUSとマンモグラフィを併用し、それぞれの結果を合わせて総合判定する医療機関もあります。より精密な乳がん病変の有無の確認ができるため、早期発見・早期治療につながります。
ABUSによる乳がん検診が向いている人
ABUSは、どんな人に向いている検査なのでしょうか。向いている方の特徴をあげてみました。
- 痛くない乳がん検診を受けたい方
- 放射線被ばくが気になる方
- デンスブレスト(高濃度乳房)と指摘されたことがある方
- 豊胸手術をしたことのある方
- 妊娠初期の方
豊胸手術をしたことのある方は、乳房を挟んで検査するマンモグラフィが受けられない可能性があります。豊胸手術に使用したシリコンバックが破裂してトラブルが起きる可能性があるためです。しかし、ABUSであれば豊胸手術をしたことのある方でも検査が受けられます。
また、放射線被ばくがないため妊娠中でも検査ができます。ただし、妊娠15週までが検査適応であること、乳房の圧迫によって子宮の収縮を促す可能性があることから、妊娠の可能性のある方は事前に医師へ相談しましょう。
従来の超音波検査を採用し、ABUSを採用していない医療機関がまだまだ多い現状があります。ABUSで乳がんの定期健診が受けられる医療機関を探して、相談・受診をしてみましょう。
まとめ
痛くない乳がん検診としておすすめのABUSについて解説してきました。ABUSは超音波(エコー)検査の一種ですが、従来の超音波検査と異なり乳房にフィットする形のスキャンヘッドが用いられているため、乳房の隅々まで鮮明な画像を確認できます。
また、検査者のスキルに左右されることのない簡単な操作性も魅力です。痛みや恥ずかしさから乳がん検診を避けてきた方や、マンモグラフィ検査の痛みを経験して定期的な乳がん検診を躊躇している方は、ABUSを採用している医療機関を探してみることをおすすめします。
セントラルクリニック世田谷では、レディスドックでABUSを採用しています。気になる症状がある方や、痛みの少ない方法で乳がん検診を受けたい方は、ぜひお問い合わせください。