齋浦明夫
AKIO SAIURA

順天堂大学医学部附属順天堂医院 院長補佐
肝・胆・膵外科 主任教授

すい臓がんは発見も治療も難しいが
診断や治療技術は日々進化。治療成績は少しずつ向上しています

目次

    すい臓がんは見つかりにくいが
    腹部超音波検査で早期に発見されることも

    すい臓は、消化酵素であるすい液と、インスリンやグルカゴンなどのホルモンを分泌する重要な臓器です。すい臓がんには2種類、すい液を通すすい管のがんと、酵素を分泌する細胞のがん(すい神経内分泌腫瘍)とがあり、約9割がすい管がんです。

    この病気は50代以降、加齢につれて発症しやすくなるのが特徴です。現在、年間4万人以上が罹患し、患者数は毎年増えています。大腸がんや肺がんなど、患者数の多いがんはほかにもありますが、死亡者数では、数あるがんの中でも上位にきます。

    すい臓がんは、見つけにくいことから「沈黙のがん」と呼ばれることもあります。胃の裏側の深い部分にあるため、一般的な画像検査では見えにくく、触診もできません。また、初期には自覚症状がほとんどなく、腫瘍マーカー検査でも変化がないのです。

    進行してから発見されることが多いがんですが、早期発見の可能性を少しでも高くするために、人間ドックで1年に1回くらいをめどに定期的に腹部超音波検査を受けておくことには意味があります。特に糖尿病患者さんや過去にすい炎を起こしたことがある方はすい臓がんのリスクが上がりますので、腹部超音波検査をおすすめします。ただ、すい臓は腹部超音波検査でも見えづらい(検査しづらい)臓器ですから、これを受けていれば100%万全、とは言い切れない点は付け加えさせていただきます。

    一部のすい臓がんには、遺伝的な要因が強く関わっているとされます。親族にすい臓がんの方がいるなど、遺伝的要因が強い場合は、若いうちからがんになるリスクがあります。当院では臨床遺伝外来で相談にも対応しています。遺伝的な要因が気になって遺伝外来を受診してから、定期的に検査を受けている方も多くいらっしゃいます。

    すい臓がんが疑われた場合は、確定診断のために、さらに詳細な検査を行う必要があります(造影CT検査、造影MRI検査、磁気共鳴胆管すい管撮影(MRCP)検査、超音波内視鏡(EUS)、内視鏡的逆行性胆管すい管造影(ERCP)等)。検査の中には、急性すい炎や出血などが起こるリスクがあるものもあるため、一部の検査は入院したうえで慎重に行われます。

    最近では、早期診断に向けて、鼻から入れたカテーテルをすい臓の狭くなっている部分に留置し、すい液を繰り返し採取して調べる連続すい液細胞診(SPACE)も一部の病院では行われるようになっています。

    健康診断や人間ドックで、あるいはすい炎の疑いなどで画像検査を受けた際に偶然異常が見つかった場合で、がんが0期の段階(すい管上皮内に留まっている状態)であれば、手術だけで根治することが期待できます。

    手術できる場合には、抗がん剤治療の併用が標準的。
    治療技術は日々進歩

    すい臓がんの治療は、手術、抗がん剤による薬物療法、抗がん剤と放射線療法を組み合わせる化学放射線療法が主です。

    手術ができるかどうかはがんの大きさ、すい臓内に留まっているか否か、すい臓周辺の血管に接触しているかどうかなどによって決まります。

    すい臓がんでは2020年にロボット支援内視鏡手術が保険適用となり、この術式は急速に普及しています。当院でも、がんが小さい場合などでロボット支援内視鏡手術で切除できる場合には、積極的にロボットを活用しています。ただしがんが大きい場合や、がんが大きな血管に接触していて血管の剥離や血管の再建が必要な場合には、開腹手術となります。

    手術可能なⅠ期のがんでは、手術の前後に抗がん剤で治療するのが標準です。診断の段階で「すぐに手術ができない」と診断されたⅡ期の患者さんでも、抗がん剤治療、あるいは化学放射線療法の効果によって手術をできるようになることもまれではなく、3か月ごとを目安に評価します。当院の肝胆膵外科では、消化器内科や内分泌内科、放射線科との連携を密にして治療を進めています。

    手術ですい臓を全摘した場合、消化酵素やホルモンを外から補うことになります。現在では、よい消化剤やインスリンを持続的に注入する小型のポンプなども使えるようになり、患者さんの生活の質も上がりつつあります。このようなことから、当院では80歳以上の患者さんにも全摘手術を実施するようになってきました。

    最近ではロボット支援手術も含めて手術の効果や安全性が上がり、抗がん剤の使い方や術後の管理もレベルアップしてきたことを実感しています。すい臓がんは難易度の高い手術なので、手術の経験は多いに越したことはありません。すい臓がんの手術件数の多い、実績のある医療施設を選ぶことが大切です。

    手術ができない患者さん、再発した患者さんには、治療の選択肢が少ないのが実情です。現在行われている分子標的薬の治験などのよい成果が期待されるところです。

    <連携医紹介>
    患者さんに向き合い、自分の知識・経験・技術を全力で出すことが使命

    ■世界初の生体肝移植を成功させた教授からの学び

    東京大学医学部で研修医として勤務し始めた頃は、肝胆膵外科の手術は時間が長く、出血量も多くて大量の輸血が必要になることもしばしばでした。その後、関連病院を回って東大病院に戻ったときにはちょうど、世界初の成人間の生体肝移植を成功させた著名な医師、幕内雅敏先生が教授として赴任された頃でした。幕内先生の手術は出血量が少なく、若手が担当する輸血や術後管理が楽になり、それ以前との違いに、心の底から驚いたことを覚えています。幕内先生に学んだことが、私の肝胆膵外科医としての基礎となりました。

    35歳でがん研究会病院に赴任して以来、上司や部下、そして患者さんに恵まれて、多くの手術の症例数を経験しました。同院は患者さんの最後の砦(とりで)としての意識が高く、チーム医療も早くから推進していて、一致団結した組織でした。今振り返ると当時が私の青春時代でしたね。精神的にも肉体的にも非常にハードな日々でしたので、人生に別の道があったかもしれないと感じたこともあったような気もしますが(笑)、いまとなっては、非常にやり甲斐のある領域に携わることができていることを、ありがたく思っています。

    ■肝胆膵外科医の仕事には終わりがない

    順天堂医院では、がんだけでなく、他の病気も抱えていらっしゃる患者さんを見る機会が増え、教育にも携わることで新たに学ぶ機会となっています。

    診断法や手術の技術の進展、薬の開発によってすい臓がんの治療成績はまだまだ上げられるはずです。肝胆すい外科医として、また教育者として、やるべきことがたくさんあります。

    日々の診療では、患者さんに向き合って、診断や治療に知識と経験と技術を全力で出すことに尽きます。手術は何千回やっても、毎回緊張します。手術の前には、手術室の前で使い慣れたルーペをかけ、両手の親指を揃えて爪に視線を向けます。ピントを合わせると一瞬で気持ちが落ち着いて、手術に集中できます。これが私の「ルーティン」ですね。

    PROFILE

    1993年東京大学医学部卒業、同大学医学部第二外科、都立墨東病院外科等を経て、2003年にがん研究会病院消化器外科に赴任。2008年から同病院消化器外科と肝胆すい外科の部長を務める。2019年順天堂大学医学部附属順天堂医院 肝・胆・膵外科教授、2020年順天堂大学消化器外科学講座 主任教授。生存率が低いことで知られる肝臓・胆道・すい臓のがんに対する治療を専門とし、低侵襲手術から拡大手術まで幅広く対応。難易度の高い手術を中心に6,000件以上の実績を誇る。
    日本外科学会、日本消化器外科学会副理事長、日本肝胆膵外科学会理事。

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    セントラルクリニック世田谷

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