全身がん検査をするには?費用や検査方法を解説
がんは日本人の死因第1位であり、早期発見が生存率向上の鍵となる疾患です。しかし、初期段階のがんは自覚症状が少なく、進行してから気付く方が多いのが現状です。
定期的に全身のがん検査を受けることが重要であるものの、「自分の年齢では必要ないだろう」「市区町村から案内される集団検診で十分だろう」とお考えの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、全身のがん検査をするのに必要な費用や、具体的な検査方法などについて解説します。全身がん検査の必要性と方法を理解し、自身の健康を守るためにお役立てください。
がん検査を受けるべき理由
日本人の2人に1人が、生涯のなかでがんに罹患するといわれています。がんは、早期に発見し適切な治療をおこなうことが生存率に大きく関わる疾患です。そのため、自覚症状がない段階で発見するために、全身のがんリスクをチェックできる検査を定期的に受けることが重要となります。
がんの早期発見・早期治療の重要性
がんの進行度をステージ0〜IVで表した場合、ステージ0〜Iの早期段階で発見されれば、5年生存率は90%以上と高い確率で治癒することが期待できます。一方、ステージIIIやIVの進行がんになると、生存率は大幅に低下します。
例えば肺がんの場合、ステージIで発見されれば5年生存率は90%以上ですが、ステージIVまで進行すると20%以下と大幅に低下します。がんを早期発見し、早期治療を開始することが生存率向上の鍵となります。
また、進行度によって治療方法の選択肢も変わります。早期の場合はなるべく体に負担がなく、治療後の生活にも影響が出にくい方法を検討できます。しかし、ある程度進行してしまうと、がんを消滅させるために負担が大きい治療を選ばざるを得ません。その結果、その後の生活に影響するケースも多いでしょう。
このように、がんを早期に発見し治療を始めることは。生存率とQOLを維持するために重要といえます。
自覚症状のないがんを見つけるには
初期のがんは自覚症状に乏しいため、症状が出てから検査を受けるのでは手遅れになりかねません。無症状の段階でがんを発見するには、定期的な検診を受けることが重要です。
がんのリスクは加齢とともに高まります。遅くても40代後半からは、定期的に全身のがん検査を受けることをおすすめします。
推奨頻度は年1回程度。家族にがん患者がいる場合や、喫煙・飲酒などの生活習慣によってリスクが高い場合は、より頻繁に検査を受けると良いでしょう。また、5年、10年単位の節目の年齢で検査を受けるのも効果的です。
がん検診は義務ではありませんので、自身で予約をして受診する必要があります。
市区町村から案内される集団検診や、個人で受診する人間ドックのオプションで、がん検診の案内を見たことがある方も多いでしょう。しかし、これらの場合は胃がんや大腸がん、肺がんや乳がん、前立腺がんなど、罹患する人の多いがんの種類を単体で調べる検査が多い傾向にあります。
それでは、全身のがん検査をするにはどのような方法が適しているのでしょうか。
全身がん検査に向いている方法は?
全身のがんリスクを一度にチェックできる検査としては、主にPETとDWIBS(ドゥイブス)の2種類があります。それぞれの特徴や違いを理解し、自分に合った検査方法を選ぶことが大切です。
PET検査とは
PET検査は、体内の糖代謝を調べることで、がんの有無や広がりを調べる検査です。全身のがんを一度にスクリーニングできるため、がんの早期発見に有効とされています。
ここではPET検査の原理や特徴、検査の流れなどを解説します。
PET検査の原理と特徴
PET検査は、がん細胞がブドウ糖を多く費量する性質を利用した検査です。ブドウ糖に放射性フッ素を付加した薬品「放射性医薬品(FDG)」を静脈注射し、専用のPET装置で全身を撮影します。細胞に取り込まれたブドウ糖が集まる場所が画像化されることで、がんがある可能性が高い部位を調べることが可能です。
主な特徴は以下のとおりです。
- 体の表面だけでなく、深部にある臓器の状態も調べられる
- がんの代謝活動を反映するため、良性・悪性の鑑別に有効
- 直径5mm以下の小さながんも検出可能
- 一度の検査でほぼ全身を調べられる
- CTと組み合わせることで、より詳細な情報が得られる
PET検査でわかること・わからないこと
PET検査では、悪性リンパ腫や肺がん、大腸がん、乳がん、膵臓がん、卵巣がんなど、多くのがんを発見できます。一方、以下のようながんは発見が難しいとされています。
- 早期の胃がんや前立腺がん
- 脳腫瘍(脳はもともとブドウ糖消費量が多い)
- 1cm以下の小さな肝細胞がん
- 尿路系のがん(膀胱がん、腎盂がんなど)
また、がん以外の病変(炎症や良性腫瘍など)が陽性になることもあるため、PET検査の結果だけでがんと断定することはできません。確定診断には他の検査も組み合わせる必要があります。
PET検査の流れと所要時間
PET検査の基本的な流れと所要時間は以下のとおりです。
- 問診・注意事項の確認(10分程度)
- 検査薬(FDG)の静脈注射(1分程度)
- 安静時間(約1時間)
- PET-CT装置での撮影(20〜30分程度)
- 安静時間(30分〜1時間程度)
検査前4〜6時間は絶飲食が必要です。また、事前の運動制限もあります。検査時間全体では2〜3時間ほどかかりますが、実際の撮影は20〜30分程度です。検査当日は、結果説明はなく、後日改めて医師から説明を受けます。
以上のように、PET検査は全身のがんを一度にチェックできる有用な検査法ですが、すべてのがんを100%発見できるわけではないことを理解しておきましょう。
DWIBS検査とは
DWIBS(ドゥイブス)検査は、強力な磁場と電磁波を用いてがんの有無を調べるMRI検査の一種です。PET検査と同様に、全身を一度にスクリーニングできるため、がんの早期発見に役立ちます。
ここではDWIBS検査の原理や特徴、検査の流れなどを解説します。
DWIBS検査の原理と特徴
DWIBS検査では、MRI装置を使って水分子の動きを画像化します。正常な細胞は水分子の動きが活発ですが、がん細胞は水分子の動きが制限されるため、その違いを捉えることでがんの有無を調べます。
主な特徴は以下のとおりです。
- 放射線被曝がなく、検査薬の注射も不要
- 頭部から骨盤部までの広範囲を一度に検査できる
- 他の検査に比べ、がんと周囲の正常組織のコントラストが明瞭
- 小さながんも発見しやすい
- 検査前の絶食や安静の必要がない
DWIBS検査でわかること・わからないこと
DWIBS検査では、肝臓がん、胆のうがん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がんなど、 幅広いがんを発見できます。とくに、PET検査では発見が難しい尿路系のがん(膀胱がん、腎盂がんなど)の検出に優れています。
一方、以下のようながんは発見が難しいとされています。
- 早期の胃がんや大腸がん
- 1cm以下の小さな肺がん
- 膵臓がん(検査の性質上、膵臓の評価が難しい)
また、DWIBS検査でも、炎症性疾患などががんと似た所見を示すことがあるため、確定診断には他の検査との組み合わせが必要です。
DWIBS検査の流れと所要時間
DWIBS検査の基本的な流れと所要時間は以下のとおりです。
- 問診・注意事項の確認(10分程度)
- MRI装置での撮影(30〜40分程度)
- 終了
検査前の絶食や安静は不要で、検査薬の注射もありません。そのため、検査の拘束時間は比較的短く、1時間以内で終了します。
ただし、体内に金属類(ペースメーカーや脳動脈瘤クリップなど)がある方や、閉所恐怖症の方は検査が受けられない場合があります。事前に医療機関に相談しましょう。
検査結果は、撮影した画像を放射線診断専門医が判定するため、当日の説明はありません。後日改めて結果説明を受けます。
以上のように、DWIBS検査は被曝がなく検査時間も短いため、体の負担が少ない全身がん検査と言えます。しかし、やはりすべてのがんを100%発見できるわけではないので、検査の限界を理解したうえで受診することが大切です。
PET検査とDWIBS検査の違い
PET検査とDWIBS検査は、どちらも全身のがんを一度にスクリーニングできる検査法です。しかし、検査の原理や特徴、費用などには違いがあります。ここでは、PET検査とDWIBS検査の主な違いを比較し、それぞれの検査の特性を理解しましょう。
検査原理の違いと検出できるがんの違い
PET検査は、がん細胞がブドウ糖を多く費量する性質を用いて、がん細胞の有無を調べる検査です。一方、DWIBS検査は、MRI装置を使って水分子の動きを画像化し、がん細胞の存在を調べる検査です。
「全身のがんを調べる」という目的は同じですが、その方法は大きく異なります。
また、検出できるがんの種類にも違いがあります。PET検査は、悪性リンパ腫や肺がん、大腸がん、乳がん、膵臓がん、卵巣がんなどの発見に優れています。
一方、DWIBS検査は、肝臓がん、胆のうがん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がんなどの発見に強みを持ち、とくに尿路系のがん(膀胱がん、腎盂がんなど)の検出に優れています。
被ばくの有無や検査時間の違い
PET検査では、放射性医薬品を使用するため、被曝が伴います。ただし、その量は胃バリウム検査と同程度で、検査のメリットを上回るほどのリスクはないとされています。一方、DWIBS検査は、MRI装置を使用するため、被曝はありません。
検査時間にも大きな違いがあります。PET検査は、検査薬注射後の安静時間と撮影時間、検査後の安静時間を合わせ、2〜3時間程度を要します。これに対し、DWIBS検査は、撮影時間が30〜40分程度で、検査前後の安静も不要なため、1時間以内で終了します。
全身がん検査でかかる費用
ここでは、PET検査とDWIBS検査の平均的な費用と、オプション検査を追加した場合の費用について解説します。
全身がん検査は自費診療のため、健康保険が適用されず、全額自己負担となります。そのため検査費用は施設によって異なりますが、相場の参考としてください。
PET検査の平均的な費用相場
PET検査の費用は、施設によって異なりますが、一般的には10〜15万円程度が相場です。この費用には、検査料、放射性医薬品の費用、診断料などが含まれています。
ただし、がんの診断目的で行われるPET検査の場合、医療保険が適用される場合があります。その場合、自己負担額は1〜3割程度になります。
DWIBS検査の平均的な費用相場
DWIBS検査の費用相場は、5〜8万円程度です。PET検査と比べると比較的安価ですが、それでも決して安い検査ではありません。
ただし、DWIBS検査は被曝のリスクがなく、検査時間も短いため、体への負担が少ないというメリットがあります。また、PET検査が苦手とする尿路系のがんの発見にも優れているため、目的や状況に応じて検査法を選択することが大切です。
オプション検査を追加した場合の費用
PET検査やDWIBS検査と併せて、他のがん検査をオプションで追加することで、がんの見落としを防ぎ、より精度の高い検査が可能になります。ただし、その分、費用も高くなります。
例えば、PET検査と胃カメラ、大腸カメラを組み合わせた検査パッケージでは、20〜30万円程度の費用がかかる場合があります。また、DWIBS検査に、乳房超音波検査や子宮頸がん検査などを組み合わせたコースでは、10〜15万円程度の費用が必要になるケースもあります。
なお、一部の企業や自治体では、がん検診の費用補助制度を設けている場合があります。加入している健康保険組合や自治体に、補助制度の有無を確認してみるのもよいでしょう。
全身がん検査を受ける病院の選び方
全身のがん検査を実施する方法としては、主にPET-CTとDWIBS(ドゥイブス)の2種類があり、これらを他の検査とも組み合わせることが有用であることがわかりました。
それでは、全身がん検査を受ける際には、どのような基準で病院を選ぶとよいでしょうか。ここでは、検査を受ける病院を選ぶ際の重要なポイントを解説します。
高精度な検査機器を備えている
全身がん検査の精度は、使用する検査機器の性能に大きく左右されます。特に、PET検査やDWIBS検査では、高性能の機器を使用することで、より小さながんも発見しやすくなります。
PET検査では、PET-CT装置の性能が重要です。より多くの検出器を備え、高い解像度を持つ装置を使用することで、がんの発見率が向上します。
DWIBS検査では、高性能のMRI装置が必要です。3テスラ以上の高磁場MRI装置を使用することで、より鮮明で詳細な画像が得られ、がんの発見率が高まります。
病院選びの際は、これらの高性能な検査機器を備えているかどうかを確認しましょう。
専門の読影医・診断医が在籍している
全身がん検査で得られた画像を正しく判断し、がんの有無を診断するには、高度な専門知識が必要です。特に、PET検査やDWIBS検査の画像は、経験の浅い医師では判断が難しいケースもあります。
そのため、PET検査やDWIBS検査の読影に精通した専門医が在籍している病院を選ぶことが重要です。日本核医学会の核医学専門医や、日本医学放射線学会の放射線診断専門医などの有資格者が在籍しているかどうかを確認しましょう。
専門医による読影・診断は、がんの見落としを防ぎ、早期発見・早期治療につながります。
事前説明とアフターフォローが充実している
全身がん検査は、がんの有無を調べる重要な検査です。検査を受ける前には、検査の目的や方法、リスク、限界などについて、十分な説明を受ける必要があります。また、検査後は、結果の解釈や、必要に応じた追加検査・治療などについて、丁寧な説明とサポートが欠かせません。
そのため、全身がん検査を受ける病院選びでは、事前説明とアフターフォローの充実度も重要なポイントになります。
事前説明では、検査の流れや注意点、費用などについて、わかりやすく丁寧に説明してくれる病院を選びましょう。また、検査に関する不安や疑問にも、真摯に対応してくれる病院であることが大切です。
アフターフォローでは、検査結果の説明や、結果に基づく適切なアドバイスが得られる病院を選ぶことが重要です。がんが見つかった場合は、迅速な治療開始や、専門医への紹介など、スムーズな対応が行われるかどうかも確認しておきましょう。
充実した事前説明とアフターフォローは、検査に対する不安を和らげ、安心して検査を受けることにつながります。
まとめ
がんは日本人の死因第1位であり、早期発見が生存率向上の鍵となる疾患です。定期的に全身がん検査を受けることで、自覚症状のない初期段階のがんを発見し、治療の成功率を高めることが可能です。
全身のがん検査をする方法としては、PET検査やDWIBS検査が有用です。それぞれ異なるメリットがあることを理解し、自身に合ったほうを選択しましょう。
また、高精度な機器と専門医がいる病院を選ぶことで、検査の精度と診断の確実性が向上します。見落とししないためには、設備だけでなく、医師の読影技術にも注目して病院を選びましょう。
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