大腸がんを早期発見するには?必要な検査や初期症状を解説

大腸がんを早期発見するには?必要な検査や初期症状を解説

大腸がんの罹患者数は、臓器別がんのなかで最も多く、死亡者数も男性で2位、女性では1位です。しかし、大腸がんはステージが進行する前に治療できれば、ほかのがんと比べて予後が良好であるため、早期発見することが重要です。

今回は大腸がんを早期発見するために、よくみられる初期症状や必要な検査について解説します。リスク因子や予防についても解説するので、体調変化が起きたときや検査を受ける際の参考にしてください。

大腸がんの早期発見につながる症状

大腸がんの早期発見につながる症状

大腸がんを早期発見するためには、日ごろの体調変化に気を配ることが大切です。よくみられる初期症状や、がんが発生した場所による症状の違いについて解説します。

主な初期症状

ごく早期の大腸がんは、無症状であることが多いです。がんが大きくなってくると、血便が出る、下痢と便秘をくり返す、便が残る感じがするなどの症状が現れるようになります。進行するにつれて、腹痛、お腹の張り、腸閉塞、貧血も伴うようになるのです。

発生場所による症状の違い

大腸がんでみられる自覚症状は、がんが発生した場所によっても異なります。大腸の右側と左側に分けて、症状の違いを確認しましょう。

右側大腸がん

大腸の右側にある盲腸・上行結腸・横行結腸では、がんが発生しても管が大きく腸の内容物が液状であるため、症状が現れにくいケースが多いです。ある程度がんが大きくなってから、腹部のこぶとして触れたり、慢性的な出血で貧血になったりすることで発見されます。

一般に知られている大腸がんの症状である、血便や腹痛は少ないとされています。

左側大腸がん

大腸の左側にある下行結腸・S状結腸・直腸にがんが発生すると、固形化した便が通過することで、血便や腹痛がよくみられます。さらに腸管ががんによって狭くなり、便が通過しにくくなるため、便が細くなる・吐き気がするなどの症状も起こりやすくなります。

大腸がんを早期発見するために必要な検査

大腸がんを早期発見するために必要な検査

大腸がんの早期発見には、適切な検査を受けることが必要です。スクリーニング検査としておこなわれる検査を3つ解説します。

便潜血検査

便潜血検査は、便のなかに存在する微量の血液を調べる検査です。1日分の便では病変を見落とす可能性があるため、2日分の便を採取します。

便潜血検査は定期的に受診することで、大腸がんによる死亡率を減少させることが世界各国の調査報告で分かっています。科学的根拠に基づいたがん検診として、便潜血検査は国が推奨する検査です。「対策型がん検診」として、住民検診や職域検診で広くおこなわれています。

腫瘍マーカー

腫瘍マーカーは、がん細胞が作り出すタンパク質や酵素などの物質です。がんの種類ごとに特徴があり、大腸がんでは主にCEAやCA19-9というマーカーを調べます。

採血で調べることができますが、早期のうちは腫瘍マーカーが異常値を示さないことが多いため、検査の精度はあまり高くありません。ほかの検査と組み合わせて総合的に判断されます。

PET-CT検査

PET-CT検査は、がん細胞が健康な細胞と比べてブドウ糖を多く取り込む性質があることを活用した検査です。大腸がんは糖代謝が活発であるため、PET-CT検査に適しています。

PET-CT検査の特徴は、1cm程度の小さながんでも発見できる可能性があり、がん組織の活動状態も確認できることです。大腸がんだけではなく、全身のがんについても調べられます。

PET-CT検査は、任意型検診として人間ドックなどでおこなわれています。

大腸がんが疑われるときにおこなう検査

大腸がんが疑われるときにおこなう検査

大腸がんのスクリーニング検査で異常が発見されると、本当にがんであるかを調べるために精密検査がおこなわれます。精密検査でおこなわれる3つの検査について確認しましょう。

大腸内視鏡検査

大腸内視鏡検査は、内視鏡を肛門から挿入して大腸を観察する検査で、大腸がんの疑いがあるときに第一選択としておこなわれています。検査中に病変が見つかれば、その部分の組織を採取して、生検をおこない良性か悪性か調べることもできます。

大腸内視鏡検査は大きく2つに分類され、1つは直腸から盲腸まで大腸全体を観察する全大腸内視鏡検査、もう1つは直腸からS状結腸までを観察するS状結腸内視鏡検査です。全大腸内視鏡検査と比べて、S状結腸内視鏡検査は前日の食事制限がなく、当日も短時間で済ませられる特徴があります。

ただし、大腸がんのリスク因子に当てはまる場合は、見落としを防ぐために全大腸内視鏡検査を受けることが望ましいでしょう。

大腸CT検査

大腸のCT検査では、肛門から炭酸ガスを注入して、大腸をふくらませてからCT撮影をおこなう「CTコロノグラフィー」がおこなわれます。腸管が癒着していたり、長すぎたりして内視鏡検査が難しいケースでも検査が可能です。

ほかの検査と比べて、痛みが少ない・バリウム注入が不要など検査による負担が軽いというメリットがありますが、X線による被ばくや病変が見つかってもすぐに採取ができないといったデメリットもあります。

注腸造影検査

注腸造影検査は、肛門から空気と造影剤(バリウム)を注入して、X線画像を撮影する検査です。病変の正確な位置や大きさを調べることができます。

腸管内に便が残っていると正しい画像が得られないため、前日の食事制限と腸管洗浄剤の服用が必要です。検査終了後は、造影剤を早く体から排出させるため、下剤を服用し、普段より水分を多く摂取します。

大腸がんを早期発見するために効果的な検査の受け方

大腸がんを早期発見するために効果的な検査の受け方

大腸がんの早期発見が目的だとしても、やみくもに検査を受診するのは得策ではありません。適切な検査の受け方について3つのポイントに分けて解説します。

受診するタイミング

大腸がん検診は、リスク因子の有無にかかわらず、40歳を過ぎたら受診するようにしましょう。国立がん研究センターがん情報サービスが公表しているデータにおいて、40歳を超えると年齢を重ねるにつれて、大腸がんの罹患者数が急増します。

職場や自治体でおこなわれるがん検診があれば、積極的に利用しましょう。スクリーニング検査で陽性の判定が出た際は、精密検査を忘れずに受診することも重要です。

適切な受診間隔

大腸がん検診として少なくとも年1回、便潜血検査を受けるようにします。リスク因子に複数当てはまる場合や、他のがんについても同時に調べたい場合は、PET-CT検査を検討しても良いでしょう。

精密検査を受ける場合は、大腸内部を直接確認できる内視鏡検査がおすすめです。内視鏡検査で複数のポリープが見つかったときは、毎年の便潜血検査に加えて、3年~5年ごとに内視鏡検査をおこなうようにしましょう。

多量のポリープが発見された場合や、がん発症リスクが高い場合は、1年ごとに内視鏡検査を受けることをおすすめします。

信頼できる医療機関の選び方

大腸がんを早期発見するためには、医療機関の選び方も大切です。性能の良い検査機器を使用した検査のほうが、より詳細な結果が得られます。

大腸内視鏡検査では、専門医が在籍している医療機関で受けると良いでしょう。内視鏡の操作に十分慣れているため、病変組織を見分けたり、異常が見つかれば適切に採取したりするなど、より精度の高い検査を受けられる可能性があります。

画像診断では、放射線診断専門医など読影スキルの高い医師によっておこなわれていることも重要です。病変のある場所によっては、読影医の能力が影響することもあります。

受診する前に検査体制について、医療機関のホームページを確認したり、問い合わせたりしてみましょう。

大腸がんの早期発見が治療に与える影響

大腸がんの早期発見が治療に与える影響

大腸がんを早期発見できた場合、進行がんと比べて、生存率や治療方法にどのようなメリットがあるか解説します。

ステージ別の5年生存率

大腸がんは、ほかの臓器のがんと比べて5年生存率は良好で、全ステージにおける5年生存率は70.9%です。ステージ別の5年生存率は以下のとおりで、早期といわれるステージ1の5年生存率は90%を超えています。

ステージ192.3%
ステージ285.5%
ステージ375.5%
ステージ418.3%

出典:国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」

大腸がんは根治を目的とした手術をおこなった後も、ステージによって再発率が異なります。

ステージ15.7%
ステージ215.0%
ステージ331.8%

出典:大腸がん検診マニュアル 2021年度改訂版

ステージ1のうちに発見・治療できると、再発率が低いことがデータで示されています。

早期発見できたときの治療方法

大腸がんをステージ1のうちに発見できると、内視鏡治療や手術でがんを取り除くことで治癒を目指します。それぞれの治療方法について確認しましょう。

内視鏡治療

内視鏡治療は、切除用の専用器具が装備された内視鏡を用いて、大腸の内側からがんを切除する方法です。がんが大腸壁の粘膜または粘膜下層のごく浅い位置までにとどまっている場合に適用されます。

がんの大きさや形に応じて、ポリペクトミー・内視鏡的粘膜切除術(EMR)・内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の3つから切除方法が選択されます。切除したがん組織は病理検査をおこない、検査結果によっては手術による追加切除をおこなうことがあります。

手術

ステージ1でも、がんが大腸壁の粘膜下層の深い位置から固有筋層まで達している場合は、手術がおこなわれます。がん病変のみならず、がんが広がっている可能性のある範囲は、腸管もリンパ節も共に切除するのが原則です。

手術方法には、お腹にメスを入れる開腹手術と、お腹に小さな穴を開けて小型カメラと手術器具を挿入しておこなう腹腔鏡下手術があります。開腹手術に比べて、腹腔鏡下手術のほうが手術による傷が小さく、術後の回復が早いというメリットがありますが、手術時間が長い・病状や体質によって手術の難しさがあるなどのデメリットもあるため、医師とよく相談することが必要です。

大腸がんの生存率や治療方法について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

>>大腸がんのステージ別の症状と余命について

大腸がんの主なリスク因子とは

大腸がんの主なリスク因子とは

大腸がんの早期発見には、発症のリスク因子を知っておくことが大切です。どのようなリスク因子があるか、3つのポイントに分けて解説します。

ライフスタイル

大腸がんの発症は、生活習慣が深くかかわっています。リスクをほぼ確実に上昇させるものは、喫煙・飲酒・肥満の3つです。日本では食生活の欧米化によって、脂質の摂取量が増えたり、食物繊維の摂取が減ったりしていることも、大腸がんの罹患率が増えている原因だと考えられています。

遺伝的要因

家族歴も大腸がんの発症にかかわるとされています。家族性大腸腺腫症やリンチ症候群をもつ家系では、大腸がんの発症率が高まることが分かっています。

家族性大腸腺腫症は、若いときから大腸にポリープができ始め、年齢とともにその数が増えて、最終的に100個以上できてしまう病気です。未治療のまま過ごすと、約半数の人が40歳代で大腸がんを発症するとされています。

リンチ症候群は、生まれつき「ミスマッチ修復遺伝子」が病的な変異によって正しく働かないため、大腸がんや子宮内膜がんなど、さまざまながんを発症する割合が高い体質です。リンチ症候群では、50歳未満の若年でがんを発症する特徴があります。

炎症性腸疾患

潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患の患者さんは、一般人と比べて大腸がんの発症リスクが高いことが分かっています。罹患している期間が長くなるにつれてがんを発症しやすくなり、がんの前段階である異形成も含めると、累積発生率は10年で3.3%、20年で12.1%、30年で21.8%という調査報告があります。

大腸がんの予防方法について

大腸がんの予防方法について

大腸がんを早期発見するだけではなく、がんになりにくい習慣を続けることも肝心です。大腸がんの予防方法について確認しましょう。

食物繊維をとる

国内外の研究調査において、食物繊維の摂取量が少なすぎると大腸がんのリスクが上昇することが分かっています。食物繊維の摂取量の目安について、厚生労働省が策定した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人男性21g以上、成人女性18g以上と推奨しています。

喫煙や過度の飲酒を控える

大腸がんを防ぐために、禁煙を心がけ、アルコール量はほどほどにしましょう。純アルコール量として1日20g以上の飲酒をする習慣がある人は、お酒を飲まない人に比べて、大腸がんの発症リスクが上昇することが分かっています。また喫煙者は、たばこを吸わない人と比べて、大腸がんの発症率が1.4倍だったという調査報告があります。

運動量を増やす

運動量を増やすことで体重が減り、リスク因子の1つである肥満を防ぐことが可能です。男性については、身体活動量が多いほど、結腸がんの発症率が低下するという報告があります。

定期的に検診を受ける

大腸がんを防ぐには、少なくとも年1回の検診を受けることが重要です。検査は受けたままにせず、精密検査が必要となった場合は受診を忘れないようにしましょう。がんではなくても、将来的にがんにつながる病気が見つかることもあります。

まとめ

大腸がんを早期発見するには?まとめ

大腸がんを早期発見するためには、体調変化に気づいたり、定期的に検診を受けたりすることが肝心です。

大腸がんのスクリーニング検査は、リスク因子の有無に応じて便潜血検査やPET-CT検査を検討しましょう。スクリーニング検査で陽性となった場合の精密検査には、大腸内視鏡検査をおすすめします。

大腸がんは早期のステージ1で発見・治療ができると、5年生存率が良好で、再発する確率も低いことが分かっています。大腸がんの発症リスクが上昇する習慣は避けて、少なくとも年1回は大腸がん検診を受診しましょう。

アクセスACCESS

医療法人社団 NIDC セントラルクリニック世田谷

〒158-0093
東京都世⽥⾕区上野⽑3-3-4
・東急⼤井町線「上野⽑駅」徒歩約5分
・駐⾞場完備

セントラルクリニック世田谷

CONTACT

ご依頼・ご相談は
お気軽にお問い合わせください。

お電話でのお問い合わせ

受付時間:平日9:00~17:00(※休診/土日祝祭日)

健診・診療に関するお問い合わせ

03-6805-9120

セカンドオピニオンに関するお問い合わせ

03-6805-9130

その他お問い合わせ

03-6805-9145