がんを早期発見するためには?必要な検査や知っておくべき初期症状を解説
がんは日本人の死因の第一位を占める疾患です。女性では3人に1人、男性では2人に1人が生涯でがんを発症するといわれており、現時点で健康であっても他人事ではありません。がんによる死亡率を減少させるためには、早期発見・早期治療につなげることが重要です。
この記事では、がんの初期症状や早期発見するための検査などについて解説します。人間ドックやがん検診を受けるか迷っている方や、がん家系などで健康に気をつけたいとお考えの方は参考にしてください。
がんの早期発見が重要な理由
がんの早期発見が重要な理由は、発症初期に発見することで治癒の可能性が高まり、がんによって命を落としてしまうことを防げるためです。
多くの場合、がんは早期に治療を開始することで治癒が期待できます。しかし、発見が遅れ進行したり多臓器に転移したりしている場合には、治療の難易度が高まり、患者の精神的・肉体的・経済的負担も増加します。
その結果、治癒が難しくなるだけでなく、生存率も低くなることが予想されます。また、治療の過程で臓器や体の機能が失われ、治癒したとしても生活に制限が出てしまう可能性もあります。
がんの死亡率を低減させ、治療後のQOLを下げないためには、早期発見のための取り組みが重要といえます。
がん早期発見のために知っておきたい初期症状
がんは早期には自覚症状に乏しく、気づきにくいことが多いですが、初期症状を把握して体調の変化に気付けるようにしておくことも早期発見のために有効です。
代表的ながんとそれぞれの発症早期の傾向は以下の通りです。少しでも気になる症状があれば、躊躇せずに医療機関を受診しましょう。
胃がん
胃がんは、早期にはほとんど症状が現れず、かなり進行しても自覚症状を認めないケースもあります。
一般的には、胃の不快感や痛み・吐き気・胸焼け・食欲不振のほか、腫瘍から出血して貧血傾向になったり黒色便が出たりすることもあります。
肺がん
肺がんも、早期には自覚症状が乏しい傾向にあります。進行してはじめて咳や痰、胸の痛み、違和感などの症状に気づいたり、痰に血液が混ざったり、動いた時に息が苦しくなったりすることがあります。
大腸がん
大腸がんも早期にはほとんど自覚症状がありません。進行すると、便の表面に血液が付着していたり、便に血液が混ざっていたりすることがあります。
乳がん
乳がんも、ごく早期は自覚症状がなく気付きにくいことが多いです。進行すると、乳房のしこりやくぼみがあることに気づき、発見に至るケースがあります。このほか、乳頭から分泌物が出たり、乳頭周囲がただれたりすることもあります。
子宮頸がん
子宮頸がんの前段階である「上皮内腺がん(AIS)」や「子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)」ではほとんど症状がみられません。子宮頸がんに進展すると、不正出血や悪臭のする膿性のおりものなどを自覚することがあります。さらに、腫瘍が子宮外に浸潤すると、下腹部痛や腰痛、下肢のむくみ、血便、血尿、大量の性器出血などを認めることもあります。
がん検診の種類
自覚症状のない状態でもがんを発見するためには、定期的な検査が欠かせません。がん検診には、「対策型検診」と「任意型検診」があり、必要な費用や検査の範囲が異なることを知っておきましょう。
対策型検診は、罹患リスクの高い年齢に対して自治体がおこなうがん検診のほか、職域や学生を対象とするものがあります。対策型検診では、集団にがん死亡率減少を目的として、有効性が確立されている検査方法が採用されます。公的ながん対策として実施されるため、費用は無料や一部自己負担で受けられますが、検査対象は特定のがん種のみとなります。
一方、任意型検診は医療機関や検診機関が提供するがん検診です。「人間ドック」などがこれにあたり、さまざまな検査方法にて実施されます。検査方法にはがん死亡率減少への有効性が確立されていないものがあるものの、個人の状況で検査を選べることが利点といえます。対策型検診と異なり、費用は全額利用者の自己負担となります。
いずれの検診にもメリット・デメリットがあり、どちらが優れているということはありません。そのため、個人の状況に合わせて適切な検診を選択することが必要です。
対策型検診の検査内容・検査方法
対策型検診には、胃がん検診・大腸がん検診・肺がん検診・乳がん検診・子宮頚がん検診があります。ここでは、それぞれの検診の検査内容や検査方法について解説します。
胃がん検診
胃がん検診の対象者は50歳以上の男女で、2年に1回受けることができます。検査方法は、問診と胃部X線検査(バリウム検査)、もしくは問診と上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)です。
大腸がん検診
大腸がん検診の対象者は40歳以上の男女で、年に1回受けることができます。検査方法は問診と便潜血検査です。
肺がん検診
肺がん検診の対象者は40歳以上の男女で、年に1回受けることができます。検査方法は問診と胸部X線検査で、50歳以上でブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の場合には喀痰細胞診がおこなわれます。
乳がん検診
乳がん検診の対象者は40歳以上の女性で、2年に1回受けることができます。検査方法は問診と乳房X線検査(マンモグラフィ)です。
子宮頸がん検診
子宮頚がん検診の対象者は20歳以上の女性で、2年に1回受けることができます。検査方法は問診と視診・内診・細胞診です。
任意型検診の検査内容・検査方法
任意型検診は、希望する全ての人が受診できます。受診期間の規定もないため、個人の希望で受診することが可能です。
任意型検診の検査方法は、検診サービスを提供する医療機関・検診機関によって異なるものの、一般的に以下のような検査方法で実施されます。
胃がん検診
問診、胃部X線検査(バリウム検査)、胃内視鏡検査(胃カメラ)など
大腸がん検診
問診、大腸X線検査、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)など
肺がん検診
問診、胸部X線検査、胸部CT検査、呼吸機能検査など
乳がん検診
問診、触診、乳房X線検査(マンモグラフィ)、乳房超音波検査など
子宮頸がん検診
問診、内診、HPV検査(単独法)、子宮頸部細胞診、HPV検査と子宮頸部細胞診の同時併用法、HPV陽性者への細胞診トリアージ法など
がん検診のメリット・デメリット
がん検診には、メリットだけでなくデメリットもあります。
がん検診のメリットは、早期発見によって救命の可能性が高まることです。がんの早期発見によって速やかに治療を開始することで、救命の可能性を高め死亡率を減少させることが期待できます。
また、検査方法によっては、がんの前段階であるポリープや異形上皮などを発見できることもあります。がん検診を受けて「異常なし」と診断されれば、安心して過ごせることもメリットといえるでしょう。
一方、検査方法によっては身体的な負担がかかることがデメリットといえます。例えば、胃がん検診で内服するバリウムは便秘になるリスクがあり、内視鏡検査には出血や穿孔などのリスクも少ないながら存在します。
また、がん検診は基本的にスクリーニング検査(がんの可能性を調べる)のため、その結果が100%正しいとは限らず、実際にはがんが無いにもかかわらず「要検査」などの結果が出ることがあります。その場合には精密検査をおこない、がんの有無を調べることになりますが、心配ないとわかるまで心理的に負担がかかることもデメリットといえるでしょう。
対策型検診と任意型検診のメリット・デメリット
対策型検診、任意型検診にもそれぞれメリット・デメリットがあります。ここでは、それぞれのがん検診のメリット・デメリットを解説します。
対策型検診のメリット・デメリット
対策型検診のメリットは、がん死亡率減少において有用性が確立されている方法で検査を受けられることです。また、対策型検診は無料もしくは一部自己負担など、個人が負担する検査費用を抑えられることもメリットといえます。
一方、対策型検診では実施される検査方法が限られるため、その検査方法で早期発見に至らないがんを発症していたり、がん以外の病気を発症していたりするケースも想定されます。そのため、胃がん・肺がん・大腸がん・乳がん・子宮頚がん以外のがんも早期に発見したいという場合や、がんだけでなく他の疾患の兆候も調べたいという場合には不向きなケースもあるでしょう。個人でなく集団の死亡リスクを下げることを目的としているため、一人ひとりにあわせて任意の検査方法を組み合わせることもできません。
任意型検診のメリット・デメリット
任意型検診のメリットは、さまざまな検査方法で受診できることといえます。そのため、より自分に合った検査を選択でき、対策型検診では発見に至らないがんを早期に発見できるケースもあるかもしれません。また、幅広い検査を受けることで、がん以外の疾患を発見できる可能性もあるでしょう。
しかし、任意型検診で行われる検査方法はがん死亡率減少において有効性が確立されたものばかりではありません。また、任意型検診は利用者が任意で受診する検査であるため、費用が自己負担となることもデメリットといえます。
がんを早期に発見するためには
がんを早期に発見するためには、個人の状況に合った検診を選ぶことが重要です。
がん検診には「対策型検診」と「任意型検診」があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。いずれの検診も目的は「がんの早期発見による死亡率の減少」であり、どちらが優れていてどちらが劣っているということはありません。
胃がん・肺がん・大腸がん・乳がん・子宮頚がんのみを早期に発見したい場合は対策型検診を選んだり、幅広い種類のがんを早期に発見するだけでなく、がん以外の病気の兆候も調べたい場合であれば任意型検診を選んだりするなど、個人の状況に応じて選択すると良いでしょう。
いずれの場合でも、がん早期発見のためには、がん検診を定期的に受けることが重要です。
現状として、がん検診の受診率60%以上に到達できていません。平成28年に内閣府が実施した調査によれば、国民ががん検診を受けないのは「受ける時間がない」「必要性を感じない」「何かあったら医療機関を受診できる」などの理由が多く認められています。
このような背景から、がん検診の受診率の低さには、がん検診の重要性が周知されていないことが影響していると考えられます。
参考
・厚生労働省「がん政策について」
・国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診受診率」
・内閣府大臣官房政府公報室「平成28年11月がん対策に関する世論調査」
まとめ
がんを早期に発見するためには、定期的にがん検診を受けることが必要不可欠です。がんの多くは早期に症状が現れにくく、発見が遅れて進行してしまうことが多いためです。発見が遅れると、救命の確立が下がるだけでなく、患者への負担も増大することが予想されます。
しかし、多くのがんは早期に発見することで治癒の可能性が高まり、死亡率を減少させることが期待できます。
がん検診には対策型検診、任意型検診があり、それぞれメリット・デメリットがあります。「胃がんや肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頚がんのみを早期に発見したい」という場合には対策型検診を選んだり、「がんの早期発見だけでなく、他の疾患の早期発見にも役立てたい」という場合には任意型検診を選んだりするなど、個人の状況に応じて選択することが重要です。
国内ではがん対策として検診受診が推奨されているものの、未だ受診率は目標に到達できていません。健康診断やがん検診について、気になる症状がなければ、つい後回しにしてしまう方も多いかと思いますが、今回の記事が毎年検診を受けようと思っていただけるきっかけとなれば幸いです。
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