肺がんを早期発見するには?必要な検査や初期症状を解説
「喫煙する習慣があると肺がんになりやすい」「肺がんは気付いたときには進行している」
このような話を聞き、もしかして自分は肺がんになる可能性が高いのではと不安に思っている方もいることでしょう。
肺がんは、あらゆるがんのなかでも特に死亡率が高いといわれています。年齢を重ねるにつれて発症リスクが高まるなか、万が一罹患してしまった場合に、早期発見できる方法はあるのでしょうか。
この記事では、肺がんのリスク因子や初期症状、早期発見のための検査などについて解説します。ご自身やご家族、身近な方などの肺がんの発症が少しでも心配な方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
肺がんとは
肺がんは、気管支を含む肺の細胞ががん化したものです。肺がんが進行すると、呼吸困難などのさまざまな症状が起こります。
肺の構造
肺は胸の左右にある臓器で、右肺は3つ(上葉、中葉、下葉)、左肺は2つ(上葉、下葉)にわかれているのが特徴です。肺は呼吸するときに酸素を取り入れ、不要な二酸化炭素を排出する役割を果たします。肺のなかには空気の通り道になる気管支があり、その先端には多くの肺胞(小さな袋)があります。
肺がんの種類
肺がんは大きく「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」に分類されます。
- 非小細胞肺がん(全体の約8〜9割)
- 腺がん:最も多く、主に肺野部に発生する
- 扁平上皮がん:主に肺門部に発生し、喫煙との関連が強い
- 大細胞がん:増殖が速く、主に肺野部に発生する
- 小細胞肺がん:肺門部と肺野部に発生する。増殖が速く転移しやすい特徴があり、喫煙との関連が強い
また、発生箇所別に見ると、肺の入り口付近の太い気管支にできる肺門型(中心型)と、肺の奥のほうにできる肺野型(末梢型)にわけられます。喫煙の習慣があると、肺門型の肺がんが発症しやすくなります。
肺がんの生存率
肺がんの5年生存率は、2014~2015年の統計だと以下になります。
非小細胞肺がん | 小細胞肺がん | |
---|---|---|
全体 | 47.5% | 11.5% |
ステージⅠ | 82.2% | 43.2% |
ステージⅡ | 52.6% | 28.5% |
ステージⅢ | 30.4% | 17.5% |
ステージⅣ | 9.0% | 2.2% |
※がんのみが死因となる状況を仮定して計算した場合(ネット・サバイバル)
出典:
国立がん研究センター がん情報サービス「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム 非小細胞肺がん(非小細胞肺癌)」
国立がん研究センター がん情報サービス「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム 小細胞肺がん(小細胞肺癌)」
非小細胞肺がんに比べ、小細胞肺がんのほうが全体的な生存率が低い結果になっています。肺がんを早期発見するためには日常生活でリスク因子をできるだけ避け、初期症状が現れた段階で早めに受診することが大切です。
肺がんのリスク因子
肺がんのリスク因子には、喫煙習慣や家族歴、有害物質や大気汚染への曝露、などがあります。
喫煙
喫煙は肺がんの最大のリスク因子です。喫煙者は非喫煙者と比較して、肺がんになるリスクが男性で4.8倍、女性で3.9倍に上昇します。喫煙期間が長く、累積喫煙本数が多いほどリスクは高いです。
喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が400を超えると、肺がんのハイリスクグループになります。仮に20年間で毎日20本喫煙した場合、喫煙指数は400に達するでしょう。
受動喫煙も肺がんリスクを約1.3倍に増加させます。特に女性の肺腺がんのリスクを高める可能性が示唆されています。
家族歴
肺がんの家族歴もリスク因子の一つです。両親や兄弟姉妹に肺がん患者がいる場合、肺がんリスクが2倍に上昇します。この傾向は、男性よりも女性でやや多く見られ、肺がんの種類では扁平上皮がんで現れやすいことがわかっています。
有害物質や大気汚染への曝露
アスベスト(石綿)への長期間の曝露も肺がんのリスクを高める要因の一つで、近年では建築工事などでも使用される場面が減ってきています。ラドンやヒ素、クロム酸、ニッケルなどの有害物質を職業や大気汚染などによって曝露することも、肺がんのリスクを増加させる要因です。慢性閉塞性肺疾患(COPD)も、肺がんを合併しやすい疾患であることがわかっています。
肺がんの症状
肺がんの症状は、初期症状と進行したときの症状で特徴が大きく異なります。早期発見につなげるために、それぞれの症状について知っておきましょう。
肺がんの初期症状
肺がんの初期症状には特有の症状が少なく、気づきにくいのが特徴です。しかし、以下のような風邪に似た症状が見られることがあります。
- 咳
- 痰
- 血痰
- 息切れ
- 呼吸困難
- 発熱
これらの症状が長引く場合で、特に咳や痰が改善しない、もしくは血痰が出る場合は、肺がんの可能性を考慮しましょう。疑わしい症状が現れたら、早期発見のためにできるだけ早く医療機関を受診することが重要です。
対象の診療科は呼吸器内科もしくは呼吸器外科となります。かかりつけ医に相談のうえ、検査設備が整っている病院の紹介を受けるのも良いでしょう。
肺がんが進行した症状
がんが進行すると、全身の症状が目立つようになります。また、腫瘍が大きくなってほかの臓器に転移すると、特有の局所症状が現れます。
【全身症状】
- 食欲不振
- 倦怠感
- 発熱
- 体重減少
【局所症状】
- 気管支:喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューいう呼吸音)
- 食道:嚥下困難
- 肋骨(周辺の神経):胸痛
- 声帯:声のかすれ
- 上大静脈・周りのリンパ節:上半身のむくみ、息切れ、めまい、頭痛、眠気
- 腕の神経:パンコースト症候群(腕の痛み、しびれ、麻痺、筋力低下)
- 首の交感神経:ホルネル症候群(まぶたの垂れ下がり、瞳孔の縮小、眼の落ちくぼみ、発汗の減少)
- 心外膜・胸膜:胸痛、整脈、胸水貯留、呼吸困難
- 骨:骨の痛み、病的骨折
- 脳:頭痛、吐き気、手足の麻痺、ふらつき、言語障害、意識障害
肺がんの早期発見のために、これらの症状も気にかけながら生活するようにしましょう。
肺がんを早期発見する方法
肺がんを早期発見するために、日常生活のセルフチェックを心がけましょう。さらに肺がん検診を定期的に受けることで、早期発見を見逃すリスクが少なくなります。
セルフチェックのためのチェックリスト
肺がんを早期発見するためのセルフチェックとして、日常生活で以下の症状がないか確認しましょう。
- 咳が時間とともに悪化する、あるいは時間が経っても治らない
- 痰に血が混じる
- 深呼吸や咳をすると胸や背中が痛む
- 息切れや息をするとヒューヒューという音がする
- 体を動かすと息苦しい
- 頻繁に動悸がする
- 微熱や高熱が続く
これらの状態が一つでも当てはまる場合は、肺がんの早期発見のためにできるだけ早く医療機関への受診をおすすめします。声のかすれや顔のむくみ、原因不明の体重減少なども注意が必要です。気管支炎や肺炎などの呼吸器の感染症を繰り返す場合も、一度肺がんを疑う必要があります。
肺がん検診
肺がんの早期発見のために、40歳から年1回の肺がん検診が推奨されています。主な検査内容は、胸部X線検査と喀痰細胞診です。
そのなかでも、喀痰細胞診は50歳以上かつ喫煙指数が600以上の人が対象になっています。肺がん検診の検査結果は通常、10日〜1ヶ月ほどで通知されます。
肺がんを早期発見するための一次検査
肺がんを早期発見するための一次検査には、肺がん検診と同様、胸部X線検査と喀痰細胞診があります。これらの検査に加えて、尿検査などをおこなうこともあります。
胸部X線検査
胸部X線検査は、X線を用いて肺の画像を撮影し、白い影の存在によって腫瘤や結節などの異常を発見する検査です。検出感度は60〜80%程度と報告されており、肺野部のがん(腺がんなど)の発見に適しています。しかし、喫煙により発症しやすい肺門部のがん(扁平上皮がん、小細胞がんなど)は心臓に隠れて見落とす可能性があるため、日々の喫煙の本数が多い人は喀痰細胞診を受ける必要があります。
喀痰細胞診
喀痰細胞診は、肺がんリスクの高い人の痰を顕微鏡で調べる検査です。検査方法には、3日分の痰を1つの容器にまとめる「蓄痰法」と、3つの容器に1日分ずつ別々に検体を入れる「連痰法」があります。
この検査では、痰の状態を調べることで、気管支などにできたがん細胞の一部が剥がれ落ちていないか確認できます。特に肺門部にできるがん(主に扁平上皮がん)は喀痰細胞診で見つけやすく、早期発見にも有用であるといわれています。
肺がんの精密検査
一次検査で肺がんの疑いが判明した場合は、胸部CT検査や生検検査などの精密検査によって確定診断します。ほかの臓器への転移が認められる場合は、全身の画像検査をおこなうこともあります。
胸部CT検査
胸部CT検査は、X線を使用して体の内部を3次元的に撮影する検査です。胸部X線検査と異なり平面画像ではないため、見落としやすいがんの検出も可能になります。
がんの形状や大きさ、周囲の組織との関係を詳細に把握できるのも特徴で、肺がんの検出感度は9割程度です。リンパ節の状態を調べるために、造影剤を使用して撮影することもあります。
生検(生検組織診)
生検は、肺がんが疑われる部位から細胞や組織を採取し、顕微鏡でがん細胞の種類を調べる検査です。細胞や組織を採取する方法は、以下のいずれかであることが多いです。
- 気管支鏡検査
直径5mmほどの「気管支鏡」という内視鏡を口や鼻から挿入して、病変部位を採取する検査です。気管支の末梢に病変がある場合は、X線で観察しながらおこなうこともあります。 - 経皮的針検査
体の表面に針を刺し、CTなどで確認しながら病変部位を採取する検査です。病変部位に気管支鏡が届かなかったり、体の表面の近くに病変があったりする場合に用いられます。 - 胸腔鏡検査
胸を1〜3箇所切開し、胸腔鏡という内視鏡を胸腔(肺と胸壁の間)に挿入して病変部位を採取する検査です。ほかの検査で病変部位が取りにくい場合に使用されます。 - リンパ節生検
リンパ節に針を刺して、病変部位を採取します。首のリンパ節が腫れている場合に用いられます。 - 開胸生検
がんが肺にあり、転移していない可能性が高い場合、外科施術により病変部位を採取して調べることがあります。
その他、溜まっている胸水を採取し、がん細胞を調べる「胸水細胞診」などが用いられることもあります。生検検査の結果が出るまでには、約2週間程度の時間がかかります。
全身の画像検査
全身の画像検査では、MRI検査や骨シンチグラフィ、PET検査などをおこないます。
- MRI検査
強力な磁場を使用し、全身のあらゆる方向から断面図を撮影する検査です。放射線に被爆するリスクがなく、がんの広がりや、転移の状態が詳細にわかる特徴があります。 - 骨シンチグラフィ
骨のがんに集まりやすい放射性の薬剤を、静脈から注入した後に画像撮影し、骨にがんが転移しているか確かめる検査です。 - PET検査
がん細胞に集まりやすい性質を持つブドウ糖が含まれた放射性物質を静脈に注入した後、全身の画像撮影によってがんの分布を調べます。CT検査やMRI検査と組み合わせると、よりがんの状態を詳細に調べることが可能です。
これらの検査を組み合わせることで、肺がんや全身のがんの正確な診断が可能となります。
肺がんを含む、さまざまながんの早期発見に必要な検査や初期症状については、以下の記事でも詳しく解説しています。興味のある方はぜひご覧ください。
>>がんを早期発見するためには?必要な検査や知っておくべき初期症状を解説
肺がんの早期発見に関するよくある質問
肺がんの早期発見に関するよくある質問を下記にまとめていますので、ぜひご覧ください。
Q.肺がんの進行速度はどのくらいですか?
A.肺がんの進行速度は個人の状態によって大きく異なるため、一概にどの程度なのかは明確にいえません。しかし、小細胞肺がんは特に進行が早く、診断されたときにはすでにほかの臓器へ転移していることも多いです。
Q.肺がんで最も多い症状は何ですか?
A.最も多い症状は咳や痰だといわれています。原因不明の咳や痰が2週間以上、発熱が5日以上続く場合は、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
Q.肺がんは早期発見で治りますか?
A.診断された時期の病期によって異なりますが、ステージⅠでは7〜9割、ステージⅡでは4〜7割、ステージⅢでは2〜4割の方が適切な治療を受けることで完治できるといわれています。
まとめ
肺がんは早期発見が遅れると生存率が低くなりやすいがんで、喫煙や遺伝によって発症リスクが高まります。肺がんを早期発見するためには、日頃の症状から疑うことが必要で、特に咳や痰がなかなか改善しない場合は、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
自覚症状がない場合でも定期的な検査は重要で、肺がん検診や人間ドックにより早期発見につながる可能性が高まります。
日常生活のセルフチェックと定期的な検査の受診が、肺がんの早期発見をサポートできる手段だといえるでしょう。
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