認知症を予防するには?年齢別の対策や早期発見のために必要なことを解説

認知症を予防するには?年齢別の対策や早期発見のために必要なことを解説

厚生労働省が2024年7月に発表した「認知症施策について」の資料によると、2030年における認知症の推定患者数が約523万人に達すると報告されています。「将来、認知症になったらどうしよう」「認知症にならない方法はあるのか」など、認知症に対する不安を感じる人も多いでしょう。今回は認知症について、リスク要因・発症予防に効果的な生活習慣・年齢別の対策法などについてわかりやすく解説します。

認知症とは?主な種類と特徴

認知症とは?主な種類と特徴

認知症は、脳の病気や変性がきっかけとなり、物事に対する理解・判断・記憶などの機能が低下して、日常生活を送ることが困難になる状態です。認知症には、いくつか種類がありますが、代表的な4種類について解説します。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、日本国内で患者数がもっとも多い病型です。20〜30年の長い時間をかけて、脳にアミロイドやタウという異常なタンパク質が溜まり、脳の神経細胞が障害されることで発症します。

初めはもの忘れの症状が現れ、何度も同じことを尋ねたり、少し前の出来事を忘れてしまったりします。徐々に進行すると、時間や場所が分からなくなる・言葉が理解できない・以前できていた作業ができなくなるといった症状が現れ、最終的に寝たきりとなるのです。

血管性認知症

血管性認知症は、脳出血や脳梗塞などの病気により、脳の機能が部分的に失われる状態です。脳が損傷を受けた場所により、現れる症状が異なります。主な症状は、もの忘れや判断力・理解力の低下です。

しかし、一部の脳の機能が保たれているため、できることとできないことの差が大きい「まだら認知」という特徴があります。また、血管性認知症では、手足の麻痺や歩行障害を伴うことが多くみられます。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、脳の神経細胞のなかにレビー小体という異常な物質が溜まることにより、脳が障害される状態です。ほかの認知症と比べて、進行が早い特徴があります。アルツハイマー型認知症と比べて、もの忘れの症状は比較的軽いものの、動作が遅くなったり転びやすくなったりするパーキンソン症状が現れます。ほかにも、実際にはいないものが見えてしまう幻視は、レビー小体型認知症の特徴的な症状です。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉や側頭葉が萎縮することで発症します。発症のしくみは解明されていませんが、タウという異常なタンパク質が神経細胞に溜まることが関係していると最近の研究で分かってきました。特徴的な症状は、社会性が欠けたり自制が効かなくなったりすることによる問題行動です。

ほかには、同じことをくり返す・感情が鈍くなるなどの症状があります。前頭側頭型認知症は、ほかの認知症と比べて発症年齢が低い(40代~60代前半)ことも特徴です。

認知症を発症しやすいリスク要因

認知症を発症しやすいリスク要因

認知症を発症するまでには、それまでの生活習慣や環境も深くかかわっています。リスク要因はさまざまありますが、代表的なものを5つ紹介します。

過度の飲酒

たしなむ程度の飲酒であれば、認知症の発症リスクを低下させます。しかし、純アルコール量として週75g以上の飲酒では、飲酒量が多くなるほど認知症発症リスクが高くなります。

純アルコール量75gは、350mLのビール約5本分です。特に中年期の人は、過度の飲酒があると高齢になったときの認知機能が低下することが分かっています。

喫煙

喫煙は、アルツハイマー型認知症や血管性認知症の発症リスクを高めることが分かっています。また、タバコの本数が多く、喫煙年数が長いほど、言葉の理解や記憶の能力が低下することが報告されているのです。

現在、喫煙している人でも、禁煙すると認知症予防につながります。4年以上禁煙を続けると、発症リスクが下がることが研究で分かっています。

高血圧

高血圧は、認知症を発症しやすいといわれています。特に中年期の高血圧は、重症化するほど血管性認知症の発症リスクを高めることが分かっています。高血圧は認知症のみならず、脳卒中や心血管障害の引き金にもなるため、早めに血圧をコントロールすることが重要です。

糖尿病

糖尿病になると、アルツハイマー型認知症や血管性認知症になりやすいことがわかっています。特に、アルツハイマー型認知症の発症リスクは、血糖値が正常の人と比べて2.1倍に上昇すると報告されているのです。

なかでも糖尿病のある高齢者は、血糖値が高いまま長期間過ごすと認知機能が低下するといわれています。また、糖尿病の治療がうまくいかず重篤な低血糖が起きると、認知症の発症リスクが高くなることが分かっています。

肥満

中年期の肥満は、認知症になりやすいことが分かっており、肥満の度合いが大きいほど発症リスクが高くなります。肥満の人は動脈硬化が進行しているケースが多いため、脳卒中や心血管疾患を発症しやすく、血管性認知症の発症リスクが上昇すると考えられているのです。さらに、肥満になるとインスリンの働きが悪くなるため、糖尿病にもなりやすいことが分かっています。

認知症予防に効果的な5つの生活習慣

認知症予防に効果的な5つの生活習慣

認知症を予防するためには、良好な生活習慣を心がけることです。発症を防ぐ効果的な方法を5つ紹介します。

1. 食生活を見直す

毎日の食事は、脳の機能維持に深くかかわっています。脳はエネルギー源として糖質を多量に消費し、神経の情報伝達にはさまざまなビタミンやミネラルが必要です。

特定の栄養素に頼らず、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。また、脳は活性酸素によるダメージを受けやすいため、抗酸化物質が豊富に含まれる野菜・果物・魚を多く取り入れたメニューをおすすめします。

栄養バランスのほかに、摂取カロリーも注意が必要です。食べ過ぎは、肥満など生活習慣病の引き金になります。

適切な食事量の目安に、手ばかり栄養法があります。1食あたり、主食は両手のひらに収まる量、主菜は手のひら1つ分です。副菜は、生野菜の場合は両手1杯分、火を通した野菜は片手1杯分になります。

2. 運動習慣をつける

複数の調査で、適度な運動を続けると認知症の発症リスクを下げることが報告されています。運動の頻度は、週3日以上、1回30分以上運動をおこなうと効果的だと分かっています。

運動の種類は、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動に加えて、スクワットや腹筋運動などの筋力アップを目的としたトレーニングを組み合わせると良いです。運動をする時間が取れない場合は、掃除をこまめにおこなったり、歩いて買い物へ行ったりするなど、家事で体を動かす時間を今より10分増やすようにしましょう。

3. 社会活動に参加する

地域貢献の活動や友人との付き合いなど社会活動への参加は、生活機能のみならず認知機能の低下を防ぎます。他者との会話は、言葉を理解する力と伝える力が必要となり、脳のさまざまな場所で神経の働きが活発になるのです。

そのため、人と交流する機会が少ないと、認知症になりやすいことが複数の調査で報告されています。同居している家族がいる人でも、少なくとも週1回はほかの人と交流する時間を設けるようにしましょう。

4. 気長に続けられる趣味を持つ

趣味やスポーツなど、暇のあるときに活動をすることは認知症の発症リスクを下げることが分かっています。特に、考える・覚える・判断するなどの「知的活動」は認知症予防に効果的です。

具体的な知的活動の例は以下のものが挙げられます。

  • 読書
  • パズル
  • 楽器演奏・コーラス
  • 囲碁・将棋・麻雀などのボードゲーム
  • 語学の勉強

5. 質の良い睡眠をとる

睡眠時間が短すぎたり、長すぎたりすると認知症になりやすいことが分かっています。9時間以上の長時間睡眠では、アルツハイマー型認知症の発症リスクが高くなると調査報告されています。個人差はありますが、成人は1日6~8時間の睡眠を取るようにしましょう。

睡眠時間のみならず、睡眠の質も重要です。寝室の環境を整えたり、就寝前にブルーライトを浴びないようにしたりするなど、質の良い睡眠を得る工夫をしましょう。

年齢別・今すぐできる認知症予防法

年齢別・今すぐできる認知症予防法

認知症の予防は、年代ごとで重視するポイントが異なります。日常生活において、今から取り組める方法を解説します。

20〜30代の認知症予防策

20~30代の人は、栄養バランスの整った食事をとったり、定期的に運動をおこなったりするなど、規則正しい生活を心がけましょう。規則正しい生活は、動脈硬化の進行や肥満を防ぎ、認知症の発症リスクを低下させることが可能です。また、多量の飲酒や喫煙を長年続けることも認知症になりやすいため、飲酒量を控える・禁煙に取り組むなどの対策をおこないましょう。

40〜50代の認知症予防策

40〜50代の人は、生活習慣病の早期発見・早期治療に努めて、認知症のリスク要因を減らすことが大切です。健康診断や人間ドックを定期的に受診して、自身の体の状態を日ごろから把握するようにします。検査で異常が見つかった際は、医師・保健師・栄養士と相談して、生活習慣を改善しましょう。

60代以降の認知症予防策

60代以降の認知症予防で重視するポイントは、難聴・社会的孤立への対策です。高齢世代では中等度以上の難聴があると、認知症の発症リスクが高くなることがわかっています。補聴器を適切に使用すると、認知機能が改善するという報告があるため、耳の聞こえにくさを感じたら早めに医療機関への相談をおすすめします。

高齢世代の孤立や孤独は、認知機能を低下させることが分かっています。趣味やサークル活動へ参加するなど、外出やほかの人との会話をする機会を作るようにしましょう。

認知症の早期発見と対応方法

認知症の早期発見と対応方法

認知症は、早期発見により、進行を遅らせたり症状を軽くしたりすることが可能です。また、認知症の前段階といわれる「軽度認知障害」では、発覚した段階で対策をおこなえば、認知症の発症を予防できます。次から認知機能が低下しているサインや、認知症かもしれないと思ったときの相談先などについて解説します。

認知症の初期症状と注意すべきサイン

認知症の初期段階では、以下のような症状がみられます。

  • 数分前に話した内容を忘れてしまう
  • 頻繁に物を探している
  • 慣れた場所への道が分からなくなる
  • 季節に応じた服を選べなくなる
  • 何をするのも億劫になる
  • 好んでいたテレビ番組や趣味に無関心になる

もの忘れの症状について、加齢によるものと認知症では大きな違いがあります。たとえば、加齢によるものでは、前日の夕食のメニューを忘れても、食事をしたこと自体は覚えています。

しかし、認知症では食事をしたことそのものを忘れているのです。以前よりもの忘れが目立つようになり、周囲の人のみならず本人も自覚しているけれども、日常生活にそれほど支障がない場合は、軽度認知障害の可能性があります。

認知症が疑われるときの相談先

「自分でも、もの忘れの多さが気になる」「身近な人が認知症かもしれない」と感じたときには、かかりつけ医への相談をおすすめします。客観的な変化に気づくことが多く、必要に応じて認知症の専門医を紹介してもらえます。

かかりつけ医がいない場合は、地域包括支援センターや都道府県に設置されている認知症疾患医療センターへ相談しましょう。もの忘れや認知症について、幅広い相談を受け付けており、適切なアドバイスを受けることが可能です。

認知症を早期発見する検査

認知症のリスクを調べる検査には、脳ドックがあります。脳ドックでは、認知症のリスク要因となる脳血管疾患があるかどうかを確認します。

主におこなわれるのは、脳の萎縮や病気を調べる頭部MRI検査や、脳の血管の状態を調べる頭部MRA検査です。医療機関によっては認知症ドックがあり、頭部MRIなどの画像診断に加えて、認知機能を確認するテストもおこなわれます。

認知症を診断する検査には、簡単な質問や作業をおこなう神経心理学検査と、脳の萎縮や血流を調べる画像検査があります。認知症の診断を希望する際は、専門病院やもの忘れ外来を設置している医療機関を受診しましょう。

まとめ

認知症を予防するためには、日ごろの生活習慣に気をつけることが肝心です。

認知症を予防するためには、日ごろの生活習慣に気をつけることが肝心です。若年層は、栄養バランスの良い食事や定期的な運動など、規則正しい生活を送るようにします。

中年期では、健康診断や人間ドックを活用し、生活習慣病を予防することが認知症リスクを下げる近道です。高齢期は社会的に孤立しないよう、対人交流や外出の機会を少なくとも週1回以上は作るようにしましょう。

認知症のリスクを調べるには、脳ドックが効果的です。認知症の発症に深くかかわる脳血管疾患についても調べることができます。年齢が上がるほど脳の病気が起こりやすくなるため、40歳を過ぎたら定期的に脳ドックを受診しましょう。

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