人間ドックとがん検診の違いとは?検査項目や費用を比較
人生100年時代といわれる今日、長く元気で過ごすため健康に対する関心が高まっています。人間ドックやがん検診で、重大な病気を早期発見・早期治療できるように備えたいと考える人もいるでしょう。
今回は、人間ドックとがん検診について、検査内容・費用の違いなどを詳しく解説します。適切な検査を受けて、いつまでも生き生きとした日々を送れるようにしましょう。
人間ドックとがん検診の違いとは
人間ドックとがん検診について、検査の目的や項目の違いについてみていきましょう。
人間ドックとがん検診の主な違い
人間ドックは、がんや生活習慣病など総合的に体の不調を見つけるもので、個人のリスクに応じて検査したい項目を選べます。
一方がん検診は、特定の臓器にあるがんを早期に見つけるものです。国が推奨するがん検診は、がんの種類や方法が定められています。
人間ドックの目的と検査項目
人間ドックは、一般的な健康診断より検査項目を増やして詳しく調べることで、自覚症状のないがんや疾患を早期発見し、早期治療につなげる目的があります。人間ドックでは以下の検査がおこなわれます。
- 人間ドック基本項目(全50項目以上)
身体計測・血圧・視力・聴力・胸部レントゲン・心電図・血液検査(腎臓系・肝機能・脂質・血糖・血液一般・血清学)・尿検査眼底・眼圧・呼吸器機能・上部消化管X線・腹部超音波・便潜血検査
人間ドックでは個人の家族歴や生活習慣によって、オプションで検査項目を追加できます。
がん検診の目的と検査方法
がん検診は、がんの早期発見・早期治療をおこない、がんで死亡するのを防ぐ目的があります。検診には2種類あり、ひとつは国が推奨する「対策型検診」、もうひとつは個人の判断でおこなう「任意型検診」です。対策型検診は、信頼性の高い研究結果で評価、エビデンスが認められた方法でおこなわれます。
対策型検診は以下のとおりです。
種類 | 検査方法 | 対象年齢 | 受診間隔 |
---|---|---|---|
胃がん | 胃部X線検査または胃内視鏡検査 | 50歳以上 | 2年に1回 |
大腸がん | 便潜血検査 | 40歳以上 | 1年に1回 |
肺がん | 胸部X線検査 (50歳以上で喫煙指数が600以上の人は喀痰細胞診も追加) | 40歳以上 | 1年に1回 |
乳がん | マンモグラフィ検査 | 40歳以上 | 2年に1回 |
子宮頸がん | 子宮頸部の細胞診および内診 | 20歳以上 | 2年に1回 |
胃部X線検査について、当面は対象年齢40歳以上、1年に1回実施可能としています。
人間ドックとがん検診の費用について
一般的には人間ドックの方が費用が高額となります。どのくらいの差があるのか確認していきましょう。
人間ドックの費用
人間ドックの費用は全額自己負担となります。基本的な人間ドックの相場は3万円~6万円です。受診者の家族歴や生活習慣などの個人的なリスクに応じて、オプション検査を追加したり、高性能の機器を利用した検査にグレードアップしたりすることができます。高級人間ドックになると費用相場は15万円~30万円になります。
がん検診の費用
国が推奨する対策型がん検診は、自治体の公共政策として実施され、費用の補助があるため、比較的安価で受診できます。対策型がん検診の費用相場は次のとおりです。
種類 | 費用相場 |
---|---|
胃がん | 胃部X線検査 1,000~2,000円 胃内視鏡検査 2,000~4,000円 |
大腸がん | 500~1,000円 |
肺がん | 胸部X線検査 500~1,000円 喀痰細胞診 300~1000円 |
乳がん | 1,000~2,000円 |
子宮頸がん | 1,000~2,000円 |
任意型のがん検診の費用相場は、5,000円~数万円になります。
人間ドックとがん検診の検査精度
人間ドックとがん検診の検査精度について、胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんの5つでそれぞれ比較してみましょう。
人間ドックの検査精度とがん発見率
人間ドックの受診実績について、2018年のデータは以下のとおりです。
検査実施者数 | 発見がん数 (疑い含む) | 確定発見 | |
---|---|---|---|
胃がん | 2,947,015 | 20,258 | 2,411 検査実施者数に対する割合:0.08% 発見がん数に対する割合:11.9% |
大腸がん | 3,162,321 | 43,433 | 2,181 検査実施者数に対する割合:0.07% 発見がん数に対する割合:5.0% |
肺がん | 3,384,771 | 14,369 | 941 検査実施者数に対する割合:0.03% 発見がん数に対する割合:6.5% |
乳がん | 1,082,078 | 14,760 | 2,493 検査実施者数に対する割合:0.23% 発見がん数に対する割合:16.8% |
子宮頸がん | 919,769 | 4,966 | 394 検査実施者数に対する割合:0.04% 発見がん数に対する割合:7.9% |
参考:日本人間ドック学会「平成30年度(2018年度)実態調査」
検査実施者数に対する割合は「がん発見率」と呼ばれ、検査において適切な頻度でがんを発見できたかをはかる目安となっています。数値が高い方が望ましいとされ、乳がんは比較的高値です。
発見がん数に対する割合は「陽性反応適中度」と呼ばれ、検査で効率よくがんを発見できたかをはかる基準となっています。陽性反応適中度も数値が高い方が望ましく、胃がんと乳がんでは10%を超えています。
がん検診の検査精度とがん発見率
対策型がん検診における2019年のデータは以下のとおりです。
がん検診受診者数 | 要精密検査者数 | がんであった者数 | |
---|---|---|---|
胃がん | 1,642,576 | 107,024 | 1,958 がん検診受診者数に対する割合:0.12% がんであった者に対する割合:1.83% |
大腸がん | 3,961,985 | 234,661 | 6,543 がん検診受診者数に対する割合:0.17% がんであった者に対する割合:2.79% |
肺がん | 3,466,673 | 55,500 | 941 がん検診受診者数に対する割合:0.03% がんであった者に対する割合:1.93% |
乳がん | 2,344,748 | 147,806 | 6,949 がん検診受診者数に対する割合:0.30% がんであった者に対する割合:4.70% |
子宮頸がん | 3,547,376 | 85,209 | 858 がん検診受診者数に対する割合:0.02% がんであった者に対する割合:1.01% |
参考:厚生労働省「令和2年度地域保健・健康増進事業報告の概況」
がん検診受診者数に対する割合は「がん発見率」です。対策型検診では、肺がん以外のがんは人間ドックより高い割合になっています。
がんであった者に対する割合は「陽性反応適中度」です。こちらはすべてのがんで人間ドックの方が良好でした。
人間ドックとがん検診を両方受ける必要はあるのか
結論から申し上げますと、人間ドックとがん検診を両方受ける必要はありません。重複で検査を受けるリスクや、適切な検査を選ぶポイントについて解説します。
同じ検査を短期間に受けるリスク
短期間で同じ検査をくり返すと、検査による合併症や使用する薬剤の副作用により体に負担がかかるだけでなく、偽陽性になる割合が上がります。不要な精密検査や治療がおこなわれることで、このような不利益が生じることがあるのです。
基本的な人間ドックのなかで、胃がん・大腸がん・肺がんについては国の推奨する方法に則った方法の検査が受けられます。女性特有のがん・前立腺がん・膵臓がんなどについてはオプションで追加可能です。
生活習慣や家族歴を考慮した選択
生活習慣の影響で体調の気になる部分があったり、家族が罹患した病気があったりした場合は、がん以外の病気も詳しく調べられる人間ドックがおすすめです。
喫煙や飲酒の習慣がある人では、低線量肺がんCT検査や頸動脈超音波検査を追加すると良いでしょう。また、身内に脳卒中や循環器疾患にかかった人がいる場合は、脳ドックや心臓ドックの選択を検討してください。
年代別おすすめの検査
年齢や性別により、優先して受けておきたい検査を紹介します。
- 20代・30代
病気を発症するリスクはそれほど高くありませんが、女性では若年でも子宮頸がんや乳がんを発症することがあります。がん検診またはレディースドックの受診を定期的に受けるようにしましょう。
- 40代
40代になると若いころからの生活習慣が蓄積されて、体に影響が現れ始めます。男女共通で、大腸内視鏡検査・Lox-index検査の追加がおすすめです。
- 50代
50代以上では、各種がんや脳卒中・心臓病にかかる割合が高くなります。全身のPET検査・頭部や心臓のMRI検査・大腸内視鏡検査のオプションを選ぶと良いでしょう。
高性能な検査機器で人間ドックやがん検診を受診するメリット・デメリット
ごく小さな病変を発見するには、どのような検査機器を利用するかも重要です。高性能な検査機器で受診するメリットやデメリットを確認しましょう。
高性能な検査機器の種類
自治体でおこなわれる対策型がん検診では使用されていませんが、人間ドックや任意型がん検診では高性能の検査機器を採用している医療機関があります。
高性能な検査機器の一例を以下に紹介します。
PET/CT検査
PET/CT検査は、ブドウ糖に放射性物質をつけた薬剤を体内に注射し、全身の状態をPETカメラとCT装置で同時に撮影するものです。がん組織が多量のブドウ糖を取り込む性質があるのを利用した検査で、体内でがんが見つかると病変部分が光ったように映ります。PET/CT検査では、PETカメラ単独で撮影するより、がんのある位置や範囲を正確に判定できるのです。
MRI検査
MRI検査は、磁石と電磁波を使い、体の断面をさまざまな方向から撮影するものです。放射線を使用しないため、被ばくの心配がありません。
従来のMRI装置は、高画質を得ようとすると検査時間が長くなる傾向がありましたが、高性能MRI装置では検査時間を延長することなく鮮明な画像が得られます。さらに高性能の装置では、従来型と比べて検査装置内の空間が広く、検査時の大きな音が軽減されています。
乳房用超音波画像診断装置(ABUS)
乳房の超音波検査は、超音波の機械を乳房に当てて、反射して返ってくる信号を画像として映し出したものです。従来の超音波検査では、精度の高い画像を得るために、検査技師の撮影スキルが必要でした。
最近登場した乳房用超音波画像診断装置(ABUS)は、検査技師のスキルに左右されず的確で鮮明な画像が得られます。
3Dマンモグラフィ(トモシンセシス)
マンモグラフィとは乳房専用のX線検査のことです。従来型は平面的な撮影しかできないため、乳腺が密集している部分では病変が分かりにくいという問題点がありました。
近年登場した3Dマンモグラフィ(トモシンセシス)は、多方面からの撮影が可能で、1mm間隔でスライスした断面画像を入手できます。乳房を立体的に確認でき、より精度の高い診断結果が得られるようになっています。
高性能な検査機器で受けるメリット
人間ドックやがん検診を高性能な検査機器で受けると、従来型の検査機器と比べてより精度の高い診断画像が得られるため、ごくわずかな病変でも発見しやすくなります。そのため病気の早期発見につながり、重症になる前の早い段階から治療が可能です。
高性能な検査機器で受けるデメリット
高性能な検査機器は、ごく小さな病変を発見できる特長があるものの、精密検査では異常が見つからない「偽陽性」となることが多いです。
高性能な検査機器で発見されたがんのなかには、治療をおこなわなくても生命に影響を与えないものがあります。しかし現在の技術では普通のがんと区別できないため、結果として「過剰診断」となるのです。
人間ドックやがん検診を受ける利点とは
人間ドックや任意型がん検診を受ける利点は、病気の早期発見・健康増進・がん死亡率の低下の3つがあります。それぞれ詳しくみていきましょう。
病気の早期発見ができる
人間ドックや任意型がん検診では、一般的な健康診断と比べて詳しい検査をおこなうため、自覚症状のみられない早期の病気を発見できます。早い段階で発見できると、治療による体や費用の負担が少なく、治療期間も短く済むことが多いのです。
健康増進に役立つ
人間ドックでは受診後に医師との面談があり、自分の体がどのような状態にあるか説明を受けられます。異常が見つかった場合は、精密検査や治療をすべきかなどの適切なアドバイスを受けることが可能です。希望すると、保健師や管理栄養士から生活習慣の改善指導も受けられるため健康増進につながります。
がんによる死亡率を低下させる
人間ドックやがん検診は、自覚症状のない早期がんを発見する目的があります。早期発見して適切な治療を受けることで、がんによる死亡率が低下するのです。
人間ドックやがん検診では早期がんの発見のみならず、ポリープや異型上皮などの病変も発見できます。経過観察を続けてしかるべき時期に治療をおこなうと、将来的にがんになるのを防ぐことが可能です。
まとめ
人間ドックは、がんをはじめ生活習慣病など全身の健康状態を確かめる検査で、個人の希望に応じて受診できます。一方がん検診は、特定の臓器にあるがんを早期発見するための検査です。人間ドックとがん検診の特徴を理解し、個人の家族歴や生活環境によるリスクを考慮して、検査を選ぶようにしましょう。
人間ドックは、基本コースでもがん検診の一部が含まれており、オプション検査を追加するとカバーできるがんの種類が増やせます。がん以外の病気についても詳しい検査ができるため、どちらを受けるべきか悩んだときは人間ドックの受診をおすすめします。
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