鈴木 直
NAO SUZUKI

聖マリアンナ医科大学 産婦人科学 主任教授

婦人科がんだけでなく、年齢とともに変わるからだを
定期的にチェックしてください

目次

    日本女性のがん第5位が子宮がん。29人に1人が子宮がんになる可能性

    婦人科領域で検診や人間ドックの対象となるのは、主に子宮(入り口に近い頸部と奥の体部)です。

    子宮頸がん、子宮体がんで、両方を合わせた “子宮がん”は、2019年には、日本人女性のがんの罹患数の第5位です。生涯に子宮がんになる累積リスクは3.4%で、女性29人に1人が子宮がんになります※。

    ※がん情報サービス(国立がん研究センター)「累積がん罹患リスク(2019年)」。子宮頸がん、子宮体がん、どちらか不明の子宮がんの数の合計

    子宮頸がんは30〜50代で診断されることが多いのが特徴です。その大きな原因となるのがヒトパピローマウイルス(HPV)による感染です。一般的には、HPVが感染しても身体の免疫の力によって排除されますが、それがうまくいかなくなったときや喫煙等によって感染が持続し、一部の方が最終的に子宮頸がんを発症すると考えられています。

    公的検診では、20歳から2年に1回、問診・視診・内診・細胞診を受け、要精密検査となった場合には、腟拡大鏡による診察と子宮頸部から採取した細胞がHPVに感染しているかどうかを調べるHPV検査を行います。

    一方、子宮体がんは50〜60代で診断される方が多く、公的検診はありません。子宮体部をこすって細胞を採取して調べる検査が、健康診断や人間ドックに組み込まれていることがあります。人によっては、検査に際して少々痛みを伴うこともあります。精度が必ずしも高くないことから、公的検診にはなっていないのです。

    このように、子宮頸がんと子宮体がんでは、検診内容は全く異なります。
    臨床の現場では、子宮頸がん検診を受けた方が、実際は子宮頸がん「だけ」の検査を受けているにもかかわらず、「子宮がん検診」という言葉が使われているために、子宮体がんや卵巣がんの検査もすべてを受けた、と勘違いしているケースに、しばしば遭遇します。
    子宮頸がん検診では、子宮体部や卵巣の検査は、通常行いません。検診を受けるときは、子宮頸がん検診なのか、子宮体がん検診なのか、確認することが大切です。

    人間ドックのオプション検査では、公的ながん検診でカバーできない画像検査も受けられる

    子宮がんの補助的な診断には、経腟超音波検査と腹部MRI検査が有効です。これらの検査では後述する婦人科系のさまざまな病気も診断できるため、人間ドックでオプションとして付けられていれば、ぜひ受けていただければと思います。

    もう一つ、頻度は高くないものの、卵巣がんにも注意が必要です。卵巣がんは自覚症状が乏しく、見つかりにくいという特徴があります。特に母親、おば、祖母、姉妹、いとこなど近い身内に卵巣がんや乳がんになった方がいる場合には、遺伝的な背景によって若くして乳がんや卵巣がん※になる可能性も考えられますので、定期的に健康診断や人間ドックを受けていただきたいです。
    ※遺伝性乳癌卵巣癌=Hereditary breast and ovarian cancer:HBOC

    健康診断や人間ドックで、がん以外の婦人科の症状もわかる

    婦人科で扱うのは、がんだけではありません。卵巣のう腫のような良性腫瘍、子宮筋腫、子宮腺筋症、月経困難症(月経痛、月経過多)など日常生活に支障を来す婦人科の症状はいろいろあります。

    女性は月経に関するトラブルを我慢しがちで、月経痛は強い鎮痛薬や生理休暇でなんとかしのぐという方が少なくありません。経血量が多いために貧血になっているのに、その状態に慣れてしまっている方も大勢いらっしゃいます。「月経は病気ではないのだから、辛くても我慢して当たり前」といった風潮もあるようですが、月経痛や過多月経は公的健康保険ではれっきとした病気として認められており、低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤(LEP製剤)の処方が保険診療で受けられます。LEP製剤の投与によって、月経の回数(年に3回程度)や経血量を減らすことができるのです。
    健康診断や人間ドックを受ける際には、月経痛や月経過多、月経が不規則、更年期症状といった自覚症状についても問診や問診票の記入があります。検査の結果と相まって、健康診断や人間ドックは自身の体調の振り返りのよい機会となります。

    健康診断や人間ドックは1年に1回を目安に同じ医療機関で受けて、経年で変化を見ていくといいでしょう。

    産婦人科のかかりつけ医を見つけ、いつでも何でも相談を!

    女性のみなさんにお伝えしたいのは、是非ご自宅の近くの産婦人科のかかりつけ医をもってほしいということです。大きな病院でもかまいませんが、ふだんからちょっとした相談事をできる街の産婦人科クリニックが良いと考えます。

    若い世代の女性は、公的な子宮頸がん検診を受け、さらにはセクシャルデビューをする前にHPVワクチン接種を受けて下さい。世界保健機関(WHO)は「2060 年には子宮頸がんはまれながんになる」としていますが、それには子宮がん検診とHPVワクチン接種の両輪が揃ってこそ実現する世界です。先進国では若い男性がHPVワクチン接種をする国も少なくありません。お母さん、おばあちゃんの立場の女性には、娘さんや姪御さん、お孫さんに将来の女性としての自身を守るために、子宮頸がん検診とHPVワクチン接種をぜひ勧めていただきたいです。

    <連携医師紹介>
    産婦人科の領域を広くカバーし、がん患者さんのさまざまな自己決定を支援しています

    医師の家系に生まれ、父や祖父と同じ産婦人科医になりました

    医師になったのは、両親ともに医師であり、代々医師の家系だったことが影響しています。子どもの頃は、何もしなくてもそのまま医師になれるのだろうと考えていましたが、勉強をしっかりしないと医学部に進学できないことに高校時代に気づいて、勉強の虫になりました(笑)。

    父と祖父が産婦人科医で、産婦人科に興味がありましたが、大学卒業前の臨床実習では、母と同じ小児科か、小児外科を専攻しようかとも考えていました。そして、胎児医療についての講義をきっかけに産婦人科に進むことに決めました。外科医への憧れもあったので、とても良い選択であったと考えています。

    大学病院として広い領域の患者さんのニーズに応えています

    産婦人科では、婦人科の疾患だけでなく、生殖医療、周産期医療、思春期から老年期までの女性ヘルスケア、遺伝診療など広い範囲を扱います。それぞれに専門性がありますが、当院では、医師がすべての範囲を見通した総合的な診療能力を持てることを重視した教育を推進し、診療を行っています。それによって、個々の患者さんの広いニーズに応えています。

    また、小児期、思春期・若年成人世代(AYA)のがん患者さんのサバイバーシップの向上にも注力しています。がんの治療は、特に若い患者さんの人生には大きく影響します。例えば、がんの種類によっては治療が将来の不妊を招くこともあるため、がんの治療開始前に、患者さんが将来子どもを持つか、持たないかの選択肢を残すかどうかを皆で話し合う必要性があります。他科や他院で治療を受けた方も含め、がん患者さんが直面する課題に広く対応し、その方の自己決定を支援します。

    PROFILE

    1965年米国生まれ。1990年慶應義塾大学医学部卒業後、同大学医学部産婦人科に入局。1996年米国カリフォルニア州のバーナム研究所で受精卵の着床に関する研究に従事。1997 年 慶應義塾大学大学院(医学研究科外科系専攻)博士課程修了。2000年同大学助手、同産婦人科診療医長、2005年聖マリアンナ医科大学講師、2009 年同大学准教授、2011年から教授。現在、聖マリアンナ医科大学病院副院長。
    専門は婦人科診療全般(特に婦人科腫瘍)、がん・生殖医療など。

    アクセスACCESS

    医療法人社団 NIDC セントラルクリニック世田谷

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    セントラルクリニック世田谷

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