原 貴行
TAKAYUKI HARA

虎の門病院 脳卒中センター部長/脳神経外科部長

寝たきりや認知症の原因になる脳血管疾患は“突然”発症します。
だからこそ脳ドックに意味があるのです

目次

    発症すると回復は「運」次第の面も。症状がないうちにリスクチェックを

    脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患は、日本人の死因の第4位です(2021年、人口動態統計)。脳血管疾患は半身不随のような重い障害や認知症を引き起こし、寝たきりの原因にもなります。

    このような脳血管疾患は突然発症します。そして、発症すると回復は時間との勝負になり、治療できる病院が近くにあるかどうかといった運不運が、予後につながります。だからこそ、何も症状がないうちに脳血管障害のリスクを調べておくことに意義があるのです。

    脳血管障害のリスクを見るには、脳そのものの画像検査、特にMRI検査が有用で、人間ドックのオプションや脳ドック単独のメニューとして用意されています。

    脳血管疾患の予防には脳ドックと生活習慣病の検査の組み合わせが有用

    ただし、脳ドックの結果だけをみていても、リスクは総合的に判断できません。脳血管の病気は全身の状態と深く関係しており、動脈硬化を促進する糖尿病や脂質異常症、高血圧、肥満といった生活習慣病のチェックが欠かせません。全身をトータルで調べた上で脳の画像検査の結果を組み合わせて評価します。

    実は、小さな脳梗塞は、年齢とともに増えていくと考えられています。これらは認知機能や運動など脳の機能にほとんど影響を与えませんし、頭痛や吐き気のような自覚症状はありませんが、MRI検査で見つかることはよくあるのです。見つかったときには、それが年齢相応なのか、年齢よりも進んでいるのかの判断が必要です。例えば、いくつか梗塞の跡があったとしても、頸動脈の血流の速度で動脈硬化の傾向が見られず、心電図でも梗塞の原因になる不整脈のリスクが低い、高血圧や糖尿病もないといった状態であれば、その時点ではあまり心配することはありません。

    脳ドックの結果は、予防だけでなく「安心」にも活かせる

    脳ドックのMRI検査では、脳梗塞だけでなく、くも膜下出血の原因となる動脈瘤、さらには脳腫瘍も見つかることがあります。これらも重大な病気ですから、調べておくと安心です。

    最近のMRIは精度が高く、直径1mmや2mmといった小さな動脈瘤が写ることがよくあります。動脈硬化やくも膜下出血の家族歴がある、喫煙する、アルコールをよく飲むといった方は破裂のリスクが特に上がります。

    もし、脳ドックで脳梗塞の跡が写っている、血管が50%を超えて狭窄している、動脈瘤があるなど何らかの異常を指摘された場合には、必ず神経内科か脳外科の診察を受けてください。専門医の診察で、「これなら次回も脳ドックで見て行けばいいですよ」「経過を見ましょう」「治療や手術を検討しましょう」「血圧を下げる薬を飲んでください」など、年齢や体質、家族歴、他の病気、生活習慣なども考慮した指示、提案を受けられます。脳ドックを受けて実際に脳梗塞や脳出血を予防できたという方がたくさんいます。もやもやした不安を抱えて過ごすより、脳ドックの結果を脳の病気の予防や安心に活かしてください。

    脳ドックは40代から、がひとつの目安

    脳ドックを受け始めるのは40代からが1つの目安ですね。糖尿病など基礎疾患がある人はもう少し若いときから受け始めてもいいかもしれません。

    MRI画像は1回の撮影だけでは詳細がわからないことも多いので、同じ医療機関で続けて撮影して経過を見ることが大切です。何も異常が見つからなければ、2年か3年に1回でいいでしょう。一方で、生活習慣病などの“首から下”のチェックは毎年受けていただきたいですね。

    <連携医師紹介>
    専門医が連携し、患者さんに最適の治療を行います

    手術の技術の進展に貢献したいと考えて脳外科を選びました

    私が医師を目指したのは、サラリーマンの父から「会社勤めではなくて、何か自分で切り盛りできる職業の方がいい」とずっと言われてきたからです。高校3年生のときに医学か天文物理学かを迷い、医学部に決めました。

    脳外科医を選んだ理由は、内科よりも外科に向いていると思ったこと、大学卒業当時の脳

    外科の技術に貢献できる部分もありそうだと考えたことです。今、多くの手術を直径3cmほどの孔から施術する鍵穴手術に取り組んでいます。実際に自分が脳外科の手技の進展に関われているのはうれしいことだと感じます。

    最新の設備を用意し、患者さんにとってベストの治療法を心がけています

    当院の脳神経に関連する診療科は専門領域ごとに3つあります(主に脳腫瘍、脳血管障害の開頭手術を担当する脳神経外科、カテーテル治療を専門とする脳神経血管内治療科、下垂体腫瘍など主に下垂体の病気の手術を行う間脳下垂体外科)。3つの科はそれぞれ独立して治療するだけでなく、カテーテル治療と開頭手術とのハイブリッド治療、間脳下垂体の特殊な症例に対する合同手術などでよく連携しています。

    例えば、脳動脈瘤が見つかったときに、「動脈瘤はまだ小さいけれど、海外旅行に行くのも怖くなりそうだから、カテーテル治療をしたい」「これからの人生で、よい生活習慣を保つ動機にしたいから、予防的に手術をしておきたい」など、患者さんは各々の希望をおっしゃいます。当院ではこの3つの科が連携して、患者さんの状態やご希望に応じたベストな治療をできるように心がけています。

    2019年に開院した新病院では、開頭手術とカテーテル治療が同じ部屋でできるハイブリッド治療室を設けました。ここでは、術中にCTや脳血管撮影を行い、その画像をナビゲーションシステムに入力して顕微鏡手術を実施しています。脳動脈瘤、脳動静脈奇形、脳腫瘍などで安全で効果の高い治療が可能です。セカンドオピニオンのためにも全国から患者さんがいらっしゃっています。

    PROFILE

    1995年東京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院、公立昭和病院、会津中央病院に勤務ののち、1998年、独マックス・プランク研究所にて脳虚血における遺伝子発現の研究に従事。2001年より会津中央病院、亀田総合病院、国立国際医療センター、東京大学付属病院を経て2004年東京都立府中病院 脳神経外科 医長、2010年より虎ノ門病院にて現職。専門は脳動脈瘤手術、血管バイパス術、もやもや病、頸動脈内膜剥離術などの脳血管障害、髄膜腫や聴神経腫瘍、頭蓋底腫瘍などの良性脳腫瘍。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医。

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    ・駐⾞場完備

    セントラルクリニック世田谷

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